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死亡フラグをへし折る受
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「本当に行くのか」
「うん」
信孝は写真家だ。戦争の現状を撮りたいと言い、
今まさに紛争の只中にある某国へ旅立とうとしている。
…あの国で外国人が何人も拉致されたり殺されたのをまさか忘れたか?
全部自己責任だぞ自己責任。わかってんのかこのバカ。
「なぁ、悠」
「なに」
「一年以内には帰ってくるから…。そしたらさ、その、お前に話が…」
「…わかった。一年だろうが十年だろうが待っててやるから、
五体満足で帰って来いよ」
そんなに顔赤くしながら「話がある」なんて、バカじゃねーのかこのバカ、俺より10も年上のくせに。
全部つつぬけだっつうの。しかしバカに惚れた俺も相当バカだ。
「じゃあ、行ってくる」
「…ん」
気をつけてなとか、しっかりやれよとか、言いたい事は色々あったのに
なぜか言葉にならなかった。
俺がまごついている間にあいつは笑顔で手を振り、
バックパックを背負って遠ざかって行ってしまった。
俺はその背が見えなくなるのを確認すると、ポケットから携帯電話を取り出す。
「もしもし?ああ、そう、今発ったから。交通手段は前伝えた通りな。
現地ではくれぐれも姿を見せるなよ。緊急の場合のみ許す」
そして一年後。
「悠!ただいま!」
そう言って嬉しそうに手を振る信孝は、一年前に比べて随分日焼けしていて
ヒゲも伸び放題で、体つきも心なしかたくましくなった気がする。
見た目は小汚い感じなのに、なぜだか格好いい。
そして俺は予定通りに信孝の告白を受け、めでたく恋人同士となった。
「それにしても、不思議なんだよなぁ」
「なにが?」
「向こうでさ、実は結構ピンチになった事が何回かあったんだよ。
でもその度に運よく逃れられて…。
強盗のグループに襲われそうになった時は、たまたま通りかかった遠征軍が助けてくれたし
いつの間にかパスポートをスられてた時も、次の朝手元に戻ってきたり
撮影に夢中になりすぎて山の中で遭難しそうになった時も、
同じ日本から来たっていうジャーナリストにバッタリ会って、ふもとまで案内してくれたんだ」
「へぇ、すごいじゃん」
「俺もう一生分の運使い果たしたんじゃないかな~」
そうかもね、あはは~などと笑いながら俺は
心の中で自社のSPと追加で雇い入れた傭兵達に向かってグッと親指を立てた。
俺が某財閥会長の孫である事は秘密にしている。
信孝は俺の事をごく普通の大学生としか思っていないだろうし、
実際そう見えるような生活しかしていない。
じーちゃんは俺の事を可愛がりすぎ過保護すぎで正直うっとうしい時もあるけど
今回ほどじーちゃんの孫に生まれて良かったと思った事はなかった。
さて次は、どうやってじーちゃんに信孝の事を認めさせるかだな。
まともに恋人ですって紹介しても、じーちゃんが脳卒中で倒れるか信孝が殺されるかだ。
まずは周りの役員から味方に引き入れよう。うん。
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[[最後に伝えたい言葉>12.5-619]]
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