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古書店主人と貧乏学生 ---- 十月十二日 古書店店主の独り言 最近、うちによく立ち読みに来る子がいる。立ち読みだけ。 立ち読みだけじゃなくできれば買って欲しいんだけど、その子は大学生のいわゆる苦学生、というやつで、毎月カツカツらしい。 大学の図書館があるだろうに、僕のとこにしかない本だとか言って、毎週入り浸っている。 苦学生というんじゃ、なんだか可哀相で、特別に立ち読みを許可している客の一人である。 図書館にない本を置いているということでちょっと優越感になんか浸っていないぞ。 十月十八日 古書店店主の独り言 今日もまた、バイト前に立ち読みに来た。丁度僕に表紙が見える位置にいる。 んー?この前もあれ読んでなかったか。 僕目が悪いからよく見えないんだけど、カバーの色が同じな気がする。読み終わんないのかな。 十月二十五日 古書店店主の独り言 また同じ本じゃないか?さすがに読み終わってもいい厚さだろうに。 ていうか、あそこ小説コーナーじゃないか。資料読んでるんじゃないのか。 好きなのかねぇ。 十月二十五日 貧乏学生の独り言 いい加減気付かないのかあの店主。 まさか表紙見えないほど目が悪いわけないだろうし、まさかね。 十月三十日 貧乏学生の独り言 おかしい。こんなにアピールしてなんで気付かないんだ。 鈍いのか。まさか、鈍いのか。 こんなあからさまなアピールないぞ。 十一月七日 貧乏学生の独り言 店主から丸見えの位置にいるのに、何も言ってこない。 こりゃあ、眼中にないとか……。 ああもう。こうなったらプランB! 十一月七日 古書店店主の独り言 おや、あの子が読んだ本が元の場所に戻ってない。 困るなぁ。いつもは戻しといてくれるのに。 ん?これ……。 十一月十四日 貧乏学生の独り言 ……スルーか?スルーなのか? せめて何かコメントは?本の間にメッセージが挟まってるとかないの? くそ。眼中にないにしたって、なにか言われるまで止めないぞ。 十一月十四日 古書店店主の独り言 今日も出しっぱなし。うーん、この小説のタイトル、やっぱりそういう意味なのかなぁ。 いつも僕の方に向けてたし。なんていうか、そんな風に見えない容姿で、やることが乙女チックだなあ。 小説のタイトルは……『あなたに初めての恋をした』 十一月二十一日 貧乏学生の独り言 今日も反応なし。あ、もう泣きそう。 どうしよう、いっそこれを買ったほうが早いか。でも古本買う金すらねぇよ。 ……ん?あれ、なんか挿んである。 「とりあえず、名前教えて」店主より ちらりと店主を見ると、うん、と頷いた。 <了> ---- [[かくれんぼ>12.5-379]] ----

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