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パパがライバル
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一番の味方は一番身近に居るという。
しかし、一番の敵も一番身近に居るという。
俺の場合、後者だけははっきりしていて。それは母親でも妹でも姉でもなく。
「てめぇぇぇ!人のデータで勝手にクリアすんなって何度言ったらわかんだコノヤロウ!!」
「うるせぇなお前こそ父親を『てめぇ』呼ばわりしてんじゃねぇクソガキ」
「お前なんか父親だなんて思ったこともねぇよ!!…母さんと姉貴が居たらぶん殴られるからいわねぇけどな!」
「胸はって言うな」
目の前にいるこの男は、戸籍上では俺の父親ということになる。
五年前、俺の本当の父親だった刑事が死んだ。逃げた強盗を取り押さえる際の怪我に因る殉職というやつだけど今は割愛しておく。
その父親の後輩がこの男だった。
父親の葬式に現れて、精神的にぼろぼろだった母さんを支えたりしているうちに仲良くなって結婚しやがった。
姉貴は母さんが幸せになってくれると泣いて喜んだし、妹の遥なんて小さかったから本当の父親の顔なんて今は忘れてしまっただろう。でも俺は、どこか納得がいかなかった。
「…てめぇなんか居なくたって、俺達は全然平気だったんだ」
「この五年でくさるほど聞いた」
現役警察官のはずのこいつの口調は最悪だ。俺と喋るときだけ必ずこうなるから母さんや姉妹は知らない。この男の本性を知らないんだ。
「てめぇが来て確かに生活は楽になった。俺が高校行けるのもてめぇのおかげだ、認めてやる。けどな!母さんや姉貴や遥を守るのは俺だ!てめぇだけの仕事じゃねーんだよ!」
「…だから?」
「……っ、もういい!!」
見てやがれ!
いつかてめぇより全然頼れる男になってやるからな!
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「……何、怒ってんだあいつ…」
勝手に怒鳴って勝手に臍曲げて、さらに勝手に部屋に戻った法律上の息子を見ながら、俺は首を傾げるしかなかった。
唯一尊敬していた上司が死んだのはもう五年も前の事になる。
正義感と責任感が強く、それでいて優しい人だった。葬儀で出会った彼の家族は皆憔悴していて、放ってはおけないと直感した。彼の妻の伴侶になるのに罪悪感がなかったわけではなかったが、彼女達の支えになれるならそれも背負える気がした。家族は段々と立ち直り、変わった。
その中でも特に目についたのがあの少年だった。大嫌いだったはずの喧嘩をよくするようになった。嫌がっていた運動をするようになって、剣道部なんてものにも入った。すべてはあの決意のためだろうか。
「本当に馬鹿だな、あのクソガキ」
母と姉妹を守るなら構わない。それは彼等の家族なのだから。
けれどその少年自身は、誰が守ってやるのだろう。
(気付かれないまま対抗意識持たれても嚼に障るんだよ、馬鹿)
黙ったままの部屋の扉をじっと見て、俺は一つ溜息を吐いた。
……ムカつくから、また奴のデータでクリアしてやろうと心に決めて。
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[[義兄>12.5-319]]
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