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ら、らめえ~ ---- がーごがーごがーごがーご シャリシャリシャリシャリ がーごがーごがーごがーご シャリシャリシャリシャリ 「ああもう!」 俺はクマさんの形のカキ氷器をまわす手を止め、思わず叫んだ。 「……ん、あに?」 そう言って目をあげたカズキの舌は、真っ青に染まっている。 昨日の夏祭りで余ったので町内会からばーちゃんがもらってきた シロップの色だ、もちろん。 「俺が作る片っ端から全部食うなよ!俺の分は?!」 「あ……おめん」 片時もスプーンを口に運ぶ手を休めずにシャリシャリ言ってたカズキは 口いっぱいにかき氷を頬張ったままそう言って笑った。 「あわりにも、うあくて」 「お前、もう舌回ってないじゃん。やっぱ食いすぎだって!」 『あまりにくも旨くて』さっきから間違いなく三杯分くらいは 食べ続けてるカズキは、舌が冷たくなりすぎたのかロレツが回らなく なりながらも、まだ欲しそうな顔をしてかき氷器を見た。 「そんな食いたいなら自分で作れよ。俺が食べるから」 「おあえの作ったやつらから、おいひいんらよ」 またにこっと笑われて、不覚にも一瞬ドキっとする。 赤くなった顔は、でもこの暑さと労働(カキ氷作り)でもともと赤いから 気づかれなかったはず。 「そんなうまいんだ?じゃ俺だって尚更欲しいわ!」 照れ隠しに大きな声を出して、スプーンを奪おうとじゃれかかる。 ついでに昔からの弱点であるわき腹をくすぐると、カズキは うひゃひゃひゃひゃ、とけたたましく笑って息も絶え絶えに 「ら、らめぇ~!これはおれのー!」 と叫んで最後の一口を頬張った。あーあ。俺の貴重な労働の成果が。 一瞬本気でへこんでがっくり首を落すと、突然首筋にひやっとした感触が あって俺は飛び上がった。 「うあっ!?」 振り返ると、俺の首筋に顔を埋めるようにして、冷えた唇と舌を肌に 押し付けてるカズキがいた。顔は見えないけど、青く染まった赤い舌の先が 変に生々しく見える。 「……んふふ」 一瞬の沈黙のあと、カズキが顔をあげる。 「ちょっとらけ、冷たさわけてあげた」 「……。『あげた』じゃねーよ!余計暑苦しいだろ!ほら、代われ」 強引に席を代わらせて、カキ氷器をしぶしぶごりごりと回しはじめた カズキに気づかれないように、そっと様子をうかがう。 「ほら、早くー」 「ちょ、そんなに早くできないって」 顔を上げずにそう言うカズキの顔は、少しだけ赤くて、それはきっと 暑さのせいだけじゃないと俺は思った。だってさっき振り返って見たときの カズキの顔は今よりももっと赤かったから。 「あ、今度の花火どうする?」 「ん?行く行くー」 がーごがーご、と音を立てて削られていく氷を見ながら、俺達はいつも通りの 夏を過ごしていた。 ---- [[orz<憎しみで人が殺せたら>13-299]] ----

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