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台風 ---- ああ……もう台風の時期か…。 朝起きると外は凄まじいまでの豪雨と風で、思わず俺はそうつぶやいた。 昨夜寝るときは静かなものだったから大分足の速い台風だ。 …そして、台風が来る頃になると決まって俺はあいつの事を思い出す。 雷が鳴るたびに怖がって俺に泣きついてきたイトコの優太…… 兄弟同然に育った俺たちは、いつもいつも一緒だったのに。 「……どこに行っちゃったんだよ、優太………  俺、もうお前に会えないのかな……ぐすっ…」 「…あのさあ、コウ兄ちゃん。そうやってわざとらしく言うのやめてくれる?  別に背が伸びたのは俺の責任じゃないんだし」 「うるさいバーカ。お前なんか優太じゃない。  いっつも半べそで兄ちゃん兄ちゃんって言いながら俺の後付いてきたくせに  急に図体ばっかりデカくなりやがって。俺の可愛かった優太を返せ!  つーか何でおんなじモン食っててお前だけデカくなるんだよ!」 「うーん。遺伝?」 「うわーん!俺に隔世遺伝してくれなかったじいちゃんのバカー!」 「それは完全に逆恨みだよ兄ちゃん……」 俺たちのじいちゃんは、享年だった78歳の時ですら身長は180cm近くて フサフサの総白髪で面長でかっこよかった。多分若い時はもっとだ。 そして今俺を後ろから包み込んでくる背中も俺の一回りは大きく、 手のひらだってアホほど広い。なんでコイツだけじいちゃん似なんだ。 一年で10cm以上背が伸びるなんてバカか。嫌味か。ちくしょう。 俺は色んなものを呪いながら、まとわりつく長い腕を振り払って台所に向かった。 じいちゃんが昔言っていた「俺ぁ若い頃はどんぶりに5杯は飯食っとったぞ」 という言葉を実践するために。 雨粒は相変わらず激しく窓を叩いているが毎年のことなので平気だ。 台風が通り過ぎたら、落ち葉なんかがひどいだろうから明日にでも墓の掃除に行こう。 それで、優太がかっこよすぎてムカつくから俺の背も伸ばしてくださいってお願いしとこうか。 あ、そうだ。あと雷嫌いはまだ直ってませんってチクってやる。 ---- [[ら、らめえ~>13-289]] ----

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