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やらずの雨 ---- ふたりで飲むのがよかった。 金はないからもっぱらお互いの家で、買ってきた総菜と菓子、発泡酒、焼酎。 つけっぱなしのテレビをBGMに、ダラダラ過ごす。 学科もバイトも出身県も同じで気が合う奴。 そんな相手に会えたことだけでも、この大学に来た甲斐があったというものだ。 あっちも同じように思っている。確信とかでなく、ごく当たり前のこととしてわかる。 ぶっちゃけ、こいつがいれば他には誰もいらない。そういう相手。 でもちょっと仲良くなりすぎたかもしれない。 「結構もててるみたいよ、おまえ」 そんな台詞で同じ講義のナントカちゃんの話なんかされても困る。なぜか困る。 それなのに妙にしつこく絡まれて、嬉しいか、なんて言われて、たまらずウゼェ、と呟いたのを聞きとがめられた。 「何、それ。なんで怒るわけ」 初めて暗い感じの喧嘩になった。 仲良くなりすぎた。女の子よりお前がいい、と思ってしまった。 お前が怒ってることに泣きそうだなんて、仲良し過ぎるだろ、俺。 黙った俺を尻目に荷物を手に出て行ってしまうのに、金縛りのまま見送るしかできない。 待って。待って。頼むから。なんだか俺変だけど、お願いだから待って。 そんな俺の心の大声は、もちろんお前には聞こえなくて、お前はあっさりドアを開けた。 「あ、雨」 いつからか外は、梅雨らしい気まぐれな土砂降りだ。 行かないで、とは言えないけど、俺の気持ちわかってくれそうな婉曲な言い方を思いついた。 口の中が粘つくが、かろうじて声を出す。 「──こういうの、遣らずの雨っていうの、知ってる?」 「えっ?」 振り返ったお前はひどく驚いた顔だ。そのままあっさりと引き返してきた。 通じるんだ、帰らないでほしい、って。よかった、俺とお前の仲だもんな。 ごめん、なんか変なことになって。飲み直そうか。コンビニ行って酒追加してもいいし。 そんな言葉を続けようとしたが、なぜか正面切って肩に手をかけられる。 怖い顔でにらみつけられる。逃げられなくてなんかやばいけど。けど。 どうして近づいてくるの、お前の顔が。 キスされた。 何がどうしてこうなったのかよくわからないんだけど、俺たちは仲直りして布団の中。 じゃなくて! だから仲良し過ぎる、ってか一線越えてるでしょ!? 何で? 「え? だってお前、ヤらずに帰るのか、って俺を誘ったじゃん」 「……ちげーよッ!! お前それでも国文かよッ!!」 ---- [[ヤリチン男にお仕置き>13-149]] ----

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