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悪の組織の幹部×同組織の最下層 ---- 哀れな存在が、私の前に転がされていた…何時もの事だ。年は18~20か。 上物、とまでは行かないがそこそこには見られる若者だ。今は薬で蕩けているが、 普段はいかにも意志が強いであろう黒い瞳も、肩まで伸びた、染めていない濃い栗色の柔らかそうな髪も、良い。 「名前は?」私は目の前の贄に、何時ものように訊ねた。 「なまえ…ない…れふ…ここにくる…とき…すて…まひた」 私は密かに心底驚いた。…1mg錠で媚薬、10mg錠は自白剤、原末1gなら一包で廃人。 私の相手をさせるべく、手錠足錠をかけこの部屋に通す時には、10mg錠2つで処置させておく。 …元々、戸籍上の名前が無いような存在でも、必ず「通り名」程度は吐くはずなのだ。 「…そうか、まぁよい」 私は驚きを隠しながらもそう言うと、彼の双丘を開かせる。 そしてその奥の小さな腔に、麻酔薬と、前述の媚薬をごく微量調合したゼリー剤を塗りこめてゆく。 …因果な性癖だと思う。私は実験がてら、組織の下位構成員のうちの、見目の良いものを化粧紙代わりに 性欲処理に使い捨ててしまわずにはいられないのだ。 この密売組織の今の立場になったのは、全くの偶然。 親が気の利いた教育を受けさせてくれたことと、そこらの野草を適当に処理しただけの物質が、 いかにも裏世界向きの作用を持っていたこと、そしてそれを私が最初に発見してしまった事。 白衣の悪魔と呼ばれるのにも、もう慣れた。すべては本当に偶然でしかない、 私は最初から悪事に手を染めるつもりはなかった。しかし運命に流されたからには、私は邪悪な存在なのだろう。 「おにー…さん…すき…れふ…きもち…い…れふ…」 私が股間の粗末な肉塊を突きこむ、ごとに。青年は嬌声をあげる。…私はお兄さんと呼ばれる年はとうに過ぎている。 強力な催淫作用と自白作用を持つ薬を多量に投与されているのに、なお世辞を使うと言うのか。 ここまでこの薬の効きの悪い人間を、私は見たことがなかった。 …否、この若者は人間か?と。得体の知れない相手に対する恐怖すら、私は彼に感じていた。 「…ねぇ…」 一通り情事…否、私が行っているのは他人の身体を使った自慰に過ぎない…を終わらせる。 普通なら相手の意識はとうに無いはずなのに、若者は甘えるように身体を摺り寄せてきた。 「お兄さんは俺のこと…覚えてませんか」 意識はだいぶ澄明になっているようだ。手錠をされながらも手振りで、自分の顔を指す。 私は首を横に振った。若者は人懐こい笑みを浮かべて、続ける。 「あの喫茶店で働いてたチビ助ですよ」 …記憶を手繰る。もう7、8年前。まだこの密売組織に入る前、発作的にBLTサンドが食べたくなったときに、 寄っていた、個人経営の喫茶食堂があった。サンドイッチがやけに旨い店だった。 「そう、あのサンドイッチ、いつも俺が作ってたんです」 …思い出した。10歳くらいの少年が健気に手伝っていたものだ。あの頃はまだ私にもわずかに良心が残っていて、 こんな子供を就労させて…と、こっそり眉をしかめていたものだ。 「だってお兄さん、綺麗だったもん。子供ながらに一目惚れしちゃって、一生懸命作ってたなぁ」 「…私が?どこがだ。世辞は効かんぞ」 「少なくとも俺にはそうなの!…で、お兄さんが来なくなってすぐ、伯父さんが死んじゃって。俺も路頭に迷っちゃって」 大きく息を継いで、胸を張って若者は続ける。 「「ここ」で働いて偉くなれば、お兄さんの情報も手に入るかと思ったけど、「ここ」にいるなんて、嬉しい誤算だったな」 …何故だろう。この若者が私に台詞を投げるたびに感じる、今までに感じた事の無い、不可解な感情。 頃合を見計らって、手錠足錠で動けない若者を、彼の直属の上官の男が連れに来る。 「…お兄さん。その気になれば、いつでも呼んで下さい。薬なんて要りませんよ」 これまでに私は、顔立ちや体格だけなら彼よりも格段に美しい若者を、何人も使い捨ててきた。 それなのに、歌うようにその台詞を口にした彼の顔は、姿は、誰よりも私にとって好ましく見えた。 「無駄口叩くな、さっさと立て」 足錠だけを外されて、退室を促される若者に、私は声をかけ…ようとした。が、できなかった。 これからかなり長い事、私は彼を指名して寝床に呼ぶことになるのだろうなと思った。 1mg錠で媚薬、10mg錠で自白剤、原末1gを一包で廃人。 …壊すのも悪くないが、壊れにくい者を、どれだけ長持ちさせられるのか試すのも面白いのではないか…と。ふと私は思った。 ---- [[悪の組織の幹部×同組織の最下層>11-429-1]] ----

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