「11-339」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

11-339」(2013/08/09 (金) 01:21:56) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

狭い密室で2人がぎゅうぎゅう詰め ---- 「あ、暑ちぃ……」 八月のとある日。時刻は午後8時。青少年研修施設の菜園近く。 一畳ほどの物置の中で農具に囲まれながら、俺の右半身に密着した滝田が悪態をつく。 大人二人がやっと入れるくらいのそこは、まさに蒸し風呂だった。 大学二年目の夏休み。学生課で紹介されたアルバイトは、小学生のキャンプの引率。 お約束のイベント、ナイトハイクのオバケ役に俺と滝田以下数名が抜擢され(アミダで) 二人してここにぶち込まれた。 「ったくよー、やってられっかっつーの。クソあちぃ」 「だから二人で中にいなくたっていいって言ってるじゃない」 暑いも何も、一人ずつ交代で中に入るのを渋ったのは滝田だ。 俺は滝田の、わずかな明かりでもわかる上気した顔と、息苦しそうに呼吸する喉元を盗み見た。 そんな俺に気づかずに無意識に体を寄せてくる滝田がかわいくて、意地悪をしてみたくなる。 「そういえばこの施設って、出るらしいよ。昼間、健太君たちが噂してた」 「出るって、何がだよ」 「さぁ。出るって言ったらいろいろ出るんじゃない?」 「はっ、ばかじゃねえの。小学生と一緒になってんじゃねえよ」 そう言いながら、なんでお前は俺のシャツの裾を掴んでいるんだ。 さっきからうるさいこの鼓動は、俺のものなのか滝田のものなのか。 「もしかして滝田、……怖い?」 肩に腕を回して耳元で囁くと、滝田の体がぴくりと震える。ああいいなあその反応。 「ふざけんなてめえ! こっ、怖いわけあるかっ!」 身動きすらままならない物置の中で、滝田が身を捩る。 滝田、それは何を誤魔化したいの。怖いのは何。 「あ、そう? じゃあ俺は向こうの東屋から見てようかな」 そう言って戸口に手をかけたその途端。 滝田が俺の腕にしがみついた。 「べっ……別に怖いとかじゃないんだからなっ! こういうのはチームワークが……」 唇を尖らせ、目を逸らしたまま嘯く馬鹿な滝田が愛しくて、密着した肌を捕らえて口づけてやった。 「さぼっちゃおうか。オバケ役」 そう言って俺は、瞬きを忘れたかのように目を瞠る滝田にもう一度唇を寄せながら、 懐中電灯の明かりを消した。 意識の遠くで、子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら通り過ぎて行った。 ---- [[「お前は本当にバカだな!」>11-359]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: