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狭い密室で2人がぎゅうぎゅう詰め
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「あ、暑ちぃ……」
八月のとある日。時刻は午後8時。青少年研修施設の菜園近く。
一畳ほどの物置の中で農具に囲まれながら、俺の右半身に密着した滝田が悪態をつく。
大人二人がやっと入れるくらいのそこは、まさに蒸し風呂だった。
大学二年目の夏休み。学生課で紹介されたアルバイトは、小学生のキャンプの引率。
お約束のイベント、ナイトハイクのオバケ役に俺と滝田以下数名が抜擢され(アミダで)
二人してここにぶち込まれた。
「ったくよー、やってられっかっつーの。クソあちぃ」
「だから二人で中にいなくたっていいって言ってるじゃない」
暑いも何も、一人ずつ交代で中に入るのを渋ったのは滝田だ。
俺は滝田の、わずかな明かりでもわかる上気した顔と、息苦しそうに呼吸する喉元を盗み見た。
そんな俺に気づかずに無意識に体を寄せてくる滝田がかわいくて、意地悪をしてみたくなる。
「そういえばこの施設って、出るらしいよ。昼間、健太君たちが噂してた」
「出るって、何がだよ」
「さぁ。出るって言ったらいろいろ出るんじゃない?」
「はっ、ばかじゃねえの。小学生と一緒になってんじゃねえよ」
そう言いながら、なんでお前は俺のシャツの裾を掴んでいるんだ。
さっきからうるさいこの鼓動は、俺のものなのか滝田のものなのか。
「もしかして滝田、……怖い?」
肩に腕を回して耳元で囁くと、滝田の体がぴくりと震える。ああいいなあその反応。
「ふざけんなてめえ! こっ、怖いわけあるかっ!」
身動きすらままならない物置の中で、滝田が身を捩る。
滝田、それは何を誤魔化したいの。怖いのは何。
「あ、そう? じゃあ俺は向こうの東屋から見てようかな」
そう言って戸口に手をかけたその途端。
滝田が俺の腕にしがみついた。
「べっ……別に怖いとかじゃないんだからなっ! こういうのはチームワークが……」
唇を尖らせ、目を逸らしたまま嘯く馬鹿な滝田が愛しくて、密着した肌を捕らえて口づけてやった。
「さぼっちゃおうか。オバケ役」
そう言って俺は、瞬きを忘れたかのように目を瞠る滝田にもう一度唇を寄せながら、
懐中電灯の明かりを消した。
意識の遠くで、子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら通り過ぎて行った。
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[[「お前は本当にバカだな!」>11-359]]
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