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雨宿り ---- &color(gray){---------------------------------------} 前略。芹沢様。 君は元気でしょうか? 風邪などひいていないでしょうか? ちなみに、僕は元気です。それなりに やっていますので、ご心配なく。……もしよかったら、ちょっと心配してくれると嬉しいけど、さ。 そういえば、最近、また新しくアルバイトを始めました。友達や縁遠くなった両親はいい加減に 定職につけと言うだろうけれど、フリーター人生が、僕には今のところ一番似合っている気がします。 芹沢。君は何て思うかな。こんな僕のこと。まだ、忘れないでいてくれてるのかな。 僕は今、君の住む(らしい)町で暮らしています。君のすぐそばで、君との思い出にしがみつく ようにして生きています。 あなたはどこにいるでしょうか? 僕のこと、まだ覚えてくれているでしょうか? 馬鹿馬鹿しい話だと、我ながら思います。 もう何年前になるのかな。最後に二人で並んで歩いたのは。 あのとき約束したよね。 また明日って、約束したから。 それだけのために、君に会うためだけに、僕は生きているのです。 直接話したいことがたくさんあります。 「大好きだ」って、ふざけないで、芹沢、お前に言ってみたいです。 「愛してる」って、笑わないで、本気で伝えてみたいです。 …………… …… &color(gray){---------------------------------------} 住所も知らぬ相手への手紙につづる文章をとうとうと考えながら、時間は流れ過ぎていく。 そうやって時間を殺すことが、最近の僕の常套手段になりつつある。 雨降りの午後、傘を忘れた僕は小さな酒屋の前で一人たそがれる。 コンビニにでもいけばビニール傘くらい買えるだろうけど、そんな合理性に従うよりも僕は 情緒溢れる「雨宿り」をたしなんでいたかった。 雨に降られながらも、東の空はぼんやりと明るい。雨がやんだなら、もしかしたら虹が出るかも しれない。そう思ったら、少しだけ、何だか気持ちが明るくなった。 ---- [[擦り合い>11-019]] ----

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