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ロマンチスト系電波受け ---- 「○市へ行こう!  そこで運命の恋人が待ってるんだ」 土曜日の朝、待ち合わせの時間ちょうどに俺の部屋にやってきた坂下は、開口一番そう言った。 「○市って……お前、今日は映画見に行くんじゃなかったのかよ」 「映画はいつでも見られるけど、運命の恋人は今日行かなきゃ会えないんだよ!」 「運命の恋人って言ってもなぁ。  お前先月も同じこと言って×市へ行ったけど、結局見つからなかったじゃないか」 「今度は絶対会えるって!  昨日夢で死んだばあちゃんがそう言ってたから間違いないよ」 「お前先月はじいさんに同じこと言われたって言ってなかったか?」 俺の冷静なツッコミに坂下はむっとしたように頬を膨らませる。 「もういいよ。一人で行くから」 「待て待て。  お前一人で行かせて、またいつかみたいに夜中に電車になくなったって呼び出されるくらいなら、最初から一緒に行った方がましだ。  車出してやるから、ちょっと待ってろ」 俺は慌てて部屋に戻ると、車のキーといつも用意してある二人分の着替えが入った鞄をつかんだ。 幸い、高速道路は思ったよりも空いていた。 この分なら昼前には○市に着くだろう。 さっきまでコンビニで買ったガイドブックを開いて、この湖で運命の恋人に会えそうだ、こっちの美術館のような気もするとはしゃいでいた坂下は、いつの間にか助手席で寝息を立てている。 坂下の『運命の恋人探し』に毎回律儀に付き合ってやるのは馬鹿馬鹿しいとは思うが、こうしてこいつの隣にいられる時間は捨てがたい。 ○市まで行ったら日帰りはまず無理だから、今日は近くの温泉地に泊まって一緒に温泉に入ってやろう。 きっとそれくらいの役得は許されるはずだ。 ちらりと隣を見ると坂下は口元に楽しげな笑みを浮かべている。 もしかしたらまだ見ぬ運命の恋人の夢でも見ているのだろうか。 どうせなら、ひいじいさんか誰かに「お前の運命の恋人は隣で運転してる男だ」って言われる夢を見ていてくれればいいのにな。 ---- [[好きになりつつあるけどまだ好きじゃない>26-349-1]] ----

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