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いつか終わる愛情に乾杯 ---- 「…えっ…えっうっうぅううう…ひっく、うぇええええええ」 「ごめん、もうちょっと静かに泣いてもらっていい」 「だ、だって…ぇだって…うぅわぁあ」 久しぶりの休日の夜、いきなり俺の部屋に押しかけてきて、夕食もとらずに 泣き通しのこいつの背中をさすりながら、俺はそっとため息をついた。 「あの女はやめとけっつったじゃん」 「…う…ひっく、でも、俺のこと…うぅえ…好き、だって…え」 「10近くも年下の男まともに相手する教師なんていねーって」 「うわあああああ」 耳を塞ぎたくなったが、あいにく俺の両手はこいつの背中にまわっててできなかった。 床にはさっきまで二人で飲んでたビールの缶が転がってる。 俺のシャツは涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。でもきっとこいつが泣きつかれて眠るまで 相手してやるんだろう。いつもそうしてきたから。 中学のとき、初恋の相手に振られたとき。高校になって、彼女が家庭教師の大学生と付き合うから 別れてくれと言ってきたとき。その次の子と付き合って2週間で大喧嘩したとき。 こいつはいつも俺のところにきて、抱きついて、泣くだけ泣いて、 『お前がいてよかったぁ』 とか言って。 都合のいいヤツだな、って俺は自嘲しながら、いつもこいつを甘やかしてる。 初めのうちは、こいつが女の子と付き合うだけで嫌な気持ちになったけど いつも必ず最後はこうなるって分かってるからもう最近は気にしないことにしてる。 そして、思いっきり泣いたあと、こいつがまた新しい女の子と恋をするのを 黙って見てる。 この希望にすがりつきながら。 どんな恋もいつか終わると信じながら。 だからといってこいつが俺のものになるわけでもないんだけど。 「……寝た?」 「…う、ひっく、ううん。ねえ。お前がいてよかった」 「……知ってる」 ---- [[踏んでくれたまえ>12.5-229]] ----

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