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寿命の違い ---- 「しょうがねぇだろ」 そう言って伯父は僕の頭をなでた。いつもは子ども扱いを嫌う僕も、その時ばかりはされるがままになっていた。 「寿命が違うもんよ。人間と犬は」 その犬は、動物好きな僕に伯父が買ってくれた犬だった。伯父のことを毛嫌いしていた母から(勿論勝手に犬を買っ てきたことにも腹を立てていた)僕は伯父に会うなと言われていた。しかし、犬の散歩と言う口実で近くに住む伯父の 家に行り浸り、名目通り散歩をし交流を続けていた。伯父と関係を保てたのは犬のおかげだった。ひどい話だが、そ の時僕は犬が死んだことよりも、犬を通して伯父と作った思い出が一緒に消えるのではないかと怯えていたのだと思う。 「俺も明後日行くけど、そん時は泣くなよ?」 怯えた原因は犬が死んだ翌々日が、伯父が海外へ旅立つ日という事もあったと思う。もう少しこの犬が長く生きたら、 その分だけ伯父が一緒にいてくれたような気がしていたのだろう。 違うよ伯父さん。僕は犬が死んだから泣いてるんじゃない。もう、犬と一緒にあんたと会えないから、あんたが僕から離 れていくから、あんたが僕を忘れそうだから泣いてるんだよとは言えず、 「泣かないよ」 と、負け惜しみのように言った。 「ってことがあったんだけど、覚えてる?」 「えーっと、いやぁ…」 「ちなみに犬の名前は、キネマ」 「あー…?」 「覚えてないんだね」 あれから10年。僕は伯父との再会を果たし過去の自分に問いかけていた。犬が死んだことは悲しかったが、どうして伯 父との思い出まで消えると思っていたのか。たかが海外に移住したくらいで、どうして今生の別れの様に思っていたのか。 会えなくなったら僕の事を忘れるような人だと、そんな風にどうして思っていたのか。 「あの頃は非力だったけど、成長した。こうやってあんたに会いに来た」 「お、おう」 「今度はあんたとの寿命の違いを思い知るまで、一緒にいても良い?」 「……そん時はまた泣くのか?」 「どうかな。自分で確かめなよ」 思い出したのか、あの日と同じように僕の頭を撫でようと伸ばされた伯父の手をとり、そこにキスをした。 あの頃の僕に教えてやりたい。お前が確かに愛した犬は、死んでも僕達の間を取り持ってくれてるよ、と。 ---- [[紳士な受け>11-129]] ----

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