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10-309 あなたを置いていくけれど。 ---- 拝啓 K様 いきなり手紙だなんて、びっくりしたことと思います。 数日前から、俺の体調はすごく悪く、もしかしたらやばいかな、と 思って、これを書いています。 今、あなたがこれを読んでいるということは、万一のことが俺に起こった ということです。とりあえず、謝っておきます。ごめんなさい。 思えば、俺の人生で一番長い時間を一緒に過ごしたのは、あなたでした。 俺の青春の思い出には、悲しいことに、全てあなたが隣にいます。 あなたのおかげで、俺は灰色の青春時代を過ごしました。 あなたは、俺が欲しくて欲しくてたまらないものを、軽々と手に入れて、 平気でドブに捨てるような人でした。 俺が大事に思ってるものを、靴底で踏みにじって、笑っているような人でした。 どれだけ腹を立て、どれだけ嫉妬したか、分かりません。 ただ、あなたは俺自身を踏みにじることだけは、しなかった。それどころか、 俺だけには優しかった。 だからこそ、俺はあなたに変な情けをかけてしまって、離れられなかったの かもしれません。 「俺はお前に興味がある。だから、俺とつきあえ」 あなたの告白の言葉は、今でも覚えています。 多分、誰が聞いても告白には聞こえないでしょう。 俺も最初、意味が分かりませんでした。 それが、あなたの最上級の愛の言葉だと理解できたのは、後になってからです。 今だから言えますが、あなたとつきあった理由は、「学年一モテる男が、俺なんか とつきあうと言いだしたのが面白かったから」でした。100%好奇心でした。 返事をしてからの10年間。あなたと一緒にいた年月は、何度後悔に 襲われたか、分かりません。別れなかった理由は、別れようとしてゴタゴタ するのが面倒くさかったからです。 だから、あなたから別れ話をされた時は、嬉しくてしょうがありませんでした。 泣きまねをしながら、やっと別れられると、心の中では万歳三唱をしたものです。 最後の日に、「いつか、また一緒になろう」なんていう気持ち悪い別れの言葉を 口にするあなたを、泣きながら殴った理由、今なら分かってくれると思います。 長々と書いてすみません。本題を書きます。 あなたに手紙を書いたのは、他でもない。 もし俺が本当に死んだとき、あなたに泣かれるのだけは嫌だと思ったからです。 どうか、俺のことはさっさと忘れてください。 俺も、あなたのことを忘れて、さっさと成仏して生まれ変わります。 草葉の陰からあなたを見守ることも、風になって近くにいることも、しません。 俺は生きたいように生きました。 俺は、あなたとまた一緒になる気はありませんでした。 だから、あの時別れたことを後悔だけはしないでください。 俺は、あなたを置いていくけれど。 どうか、そのことを受け入れてください。 今までどおり、あなたはあなたらしく生きてください。 最後の手紙がこんなのでごめん。 でも、どうか、くれぐれもよろしくお願いいたします。 敬具。 ----   [[兄(高2)×弟(中1)で無理やり→→→3年後下克上>10-319]] ----

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