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顔を隠す ---- 「えー、じゃあこんなんはどーお?『な、七瀬クンのばかぁ!!』」 ご丁寧に女声まで作ってバッと顔を手で隠すしぐさをした鹿山に 「う~ん駄目、何かありきたり、嫌いじゃないけど惜しい」 と返す僕は少女漫画家の七ツ星ひかる、本名は七瀬光 何故こいつが真夜中にこんな子芝居をしているのかというと 『後輩から突然キスされたヒロインに最適な反応が思いつかない』 という事を夕方ごろ鹿山になんとなく相談してみた所 「俺今日暇だし協力しに行っちゃおっかな~」 と自ら扱き使われに押しかけて来たからである 「いいじゃんもうありきたりでー、俺王道好きよ?」 などとぶつぶつ言っているが多分鹿山は僕が納得するまで付合うだろう この鹿山順平というやつは案外律儀な男である 例えば僕らがまだ高校生の頃、鹿山に誕生日プレゼントの希望を聞いたことがある 鹿山は今まさに良い悪戯を思いつきましたと言わんばかりの顔をして 『お前が漫画家になった時ヒロインの髪型を俺と同じにしてくれるだけでいいよ』と言った だが生憎僕はロングヘアのヒロインを描きたかったから 『なら君は僕が漫画家になるまでに髪を伸ばしておけよ』と返しておいた その日から僕のデビュー作が完結した日まで鹿山の髪はずっと長いままだった 僕のデビュー作が最終回を迎えて少し後、鹿山はバッサリ髪を切った 『超さっぱりー頭がかるいー』と喜んでいたのでやっぱり長髪は面倒だったんだろう 次のヒロイン案を考えていた僕は鹿山の短くなった髪を見て少し落ち着かない気持ちになった そしてなぜかヒロインのデザイン案だけが全く思い浮かばなくもなった 数日後気分転換に出た先で帽子を見つけた、なんとなく鹿山に似合いそうだったから買って帰って投げて渡した その夜同じ帽子をヒロインに被せてみると何かが吹っ切れたように スラスラ案が浮かんでくるようになった、ヒロインの名前はなんとなく純にした その話を鹿山にしてみると次から夜でも室内でもお構い無しに必ず帽子を被ってくるようになった これが数年前の話、今日の様に僕の手伝いをしに来る日は今でもあの帽子を被ってくる まだ連載が続いているからだろうがちょっと行き過ぎな位に律儀な奴だと思う 「んー、じゃあこれは?『七瀬クン…酷いよ…!』で思いっきりビンタ」 やっぱり女声を作りながら僕の頬を軽く打つ鹿山 「駄目シリアスは合わない、というかさっきから七瀬クン七瀬クンって後輩君の名前は辻だ」 「いーじゃん別に、いまここに居るのは七瀬クンと鹿山チャンなんだし  ってか、お前こそ人が折角かわいーく言ってやってるのに駄目駄目ってさぁ」 ブスっと頬を膨らませる、お世辞にもかわいいとはいえない顔だ 「かわいーく、ってあの微妙な女声のことか?」 「かわいいだろ?結構上手くて結構かわいいって評判なんだぜこれ」 「いやかわいくないだろ…、お前は普通の声で普通に『光ー』って呼んでる時のがいいよ」 僕が眉をひそめながらそう言うと、鹿山はきょとんとした顔で少し固まった後真っ赤になった 「わー!」だの「ぎゃー」だの言いながら帽子を頬まで引き下げ顔を隠そうとしている 「ああそれいいな!帽子で顔を隠すの!キャラの個性もでるしかわいいし!  じゃあ僕ちょっと続き描いてくるからっ、そこで好きなだけごろごろしてていいぞ!」 なんでいきなり真っ赤になったのかちょっと気にならない事もないが とにかく今は頭に浮かんだイメージを逃がさないようにと駆け足で仕事場へ向う バタンと大きな音を立てて閉まったドアの向こうから「光のばーか!!」 と聞こえたが今日の礼なら別の日に飯でもおごるからそれで許してもらおう その時になんでさっきあんなに真っ赤になったのかも聞いてみようと思った ----   [[あいみての のちのこころに くらぶれば>25-699]] ----

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