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トリック・アンド・トリート ---- 「trick or treat!」 やたら小気味よい発音と共に現れた猫耳野郎を見て、俺はがくりと肩を落とす。 無言のまま部屋に入り、何か菓子がないかと探れば、学校で貰ったチョコを発見した。 包み紙をあけて、ほれ、と呟けば、タクは嬉しそうに口を開くので、そこに放り投げてやる。 「んっ! おいひい」 「何か高いヤツらしいから」 「! 俺が貰っていいの?」 「…口モグモグしながら言われても少し説得力に欠けるっていうか…」 苦笑しながら招き入れれば、にゃんにゃんっ、と自作のにゃんにゃん鼻歌を奏でつつ入室した。 そっか、ハロウィンか、などとのんきに思いつつタクのマグカップを取り出した。 「(…そうだ)」 ふと思いついた悪戯に、頬が緩む。 コーヒーを淹れて彼の前に置いてから、頭につけられたネコミミカチューシャを装着してみた。 タクは目を丸くしたのち、ゲラゲラと笑い出す。似合わないのなんて重々承知だ。 俺は笑みを湛えつつ、彼の手首を掴んで馬乗りになった。タクの表情が一変する。あ、やべえって思ってるな。 「タク」 「あの、この手はいったい」 「trick and treat?」 「選択権ないのっ?!」 唇を耳元に近づける。 「キスと、それよりも凄いこと、するからね」 ----   [[本物とニセモノ>25-279]] ----

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