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徐々に好きになる ----  最初はただの共演者だった。 同業者で、いい声をしてるなあ、演技うまいなあ、とその程度の認識。 でも少しずつ、仕事が重なる機会が増えて、彼の中身が見えるようになってきた。 それが俺たちのファーストステップ。 「あれ、それ、健くんも好きなんだ?」 「え、うん」  そういって話しかけられたのがセカンドステップ。 背後からそう言われて驚いたのも、いい思い出。人に引かれてしまうほどにはゲームオタクだった俺にとって、 同様の趣味を持つ同年代の友人は貴重すぎるほどに貴重だった。 それから確か、話すことが増えた気がする。 「今度俺に服選んでよ」 「ええ? なんで」 「健、センスいいじゃん。ね、お願い」  服選びという名目で二人で出かけたのが、サードステップ。 これがきっかけでちょくちょく遊びにいくようになったのを、覚えている。 この時点で一番心を許して、一番落ち着くのが上尾だったのも、また事実。 「いらっしゃ、 って、どしたの?!」 「……フられた」 「とりあえず、家入れ。な?」  黙って頷く彼を家に招いたのが、最後のステップ。 悲痛に歪めた上尾の顔を見るのがつらかった。彼をこんな風にした女の人を、許す気になれなかった。 それと同時に、思った。 「(こいつを泣かせたくない)」  それがもう、友情の枠の好きを、ゆうに飛び越えてしまったことを知るのは―― もう少し、あとになってからだ。 ----   [[傭兵>25-189]] ----

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