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「25-149」(2013/01/04 (金) 15:30:25) の最新版変更点
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弟に依存する兄と、依存されていることに気が付かない弟
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いつも通りの夕飯を終えて2階へ上がっていく弟の背中に、僕はいつも通りに声をかけた。
「春也、宿題たくさん出たんだって?兄ちゃんが手伝ってやろうか」
じりじりとした気持ちの揺らぎが声へ現れないよう、頭痛がしそうなほど細心の注意を払った。
弟の答えもいつもと同じ。
「なんでだよ。自分でやるからいいよ」
「そうか、わからないところがあったら言えよ」
僕の答えもいつもと同じ。
「ありがと。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
カチャリと軽い金属音を残して閉まった部屋の扉を、僕はいつまでも眺めていた。
こんなことを考えている間にそれほどの時間が経ったのだろうか。はっきりとした感覚がない。
自分の立ち位置すら不明瞭に感じる。
それは2年前から徐々に、僕を蝕んでいた。
15歳の誕生日を目前に控えた春也が、深夜に僕の部屋のドアをそっと開けた。
僕は不機嫌を取り繕うこともなく、「ノックぐらいしろよ」と視線をあげた。
「…に、兄ちゃん、」
消えそうな声でそう言った春也の手には、日ごろ見慣れた、白く濁った液体が見えた。
それからというもの、馬鹿だが要領のいい春也に、僕はいろいろなことを教えた。
母子家庭でなければ、父親が教えるはずだっただろうことを。
高校へ入ってからはそんなことも減った。
僕と違う高校へ進んだ春也は、時々の反発と痛みとを繰り返して成長した。
彼女ができ、友人が増え、母を敬い、家族を愛し始めた。
こんな僕のことも。
けれど僕の中にある捻じ曲がった一種の庇護欲は、かえって飢えていくばかりだった。
教えたい。春也に何かを。
教えたい。あの目に、耳に、彼のすべてに。春也が僕に。
集中してくれたら。すべてを研ぎ澄まして、僕だけを見てくれたら。
教えたい。春也に。
君が好きなんだと。
「春也ぁ…」
うずくまり泣き出すと、本格的に視界が揺らいだ。
母が洗っているはずの、食器の音が聞こえない。
ぼたぼたと零れている筈なのに、涙は分厚く目の前を覆ったまま。
呼吸が苦しくなるのをただじっと感じていると、勢いよく腕を引かれた。つられてよろけながら立ち上がる。
「兄ちゃん!」
「あ…」
春也、と言ったつもりが、うまく言葉にならない。
「どうしたんだよ?なに?どっか具合でも悪いの?」
「いや、だ……大丈、夫」
今度は声に出た。
「疲れてんの?進学校は大変だねー。ほらしっかり立って!」
ぶら下がるようにだらんとしていた僕の体を、春也が部屋まで引っ張って行く。
「兄ちゃんの部屋は参考書しかねえからな、今日は俺の部屋で寝な」
「いや別に…参考書は好きだよ…」
ぼんやりしたままで答える。涙はいつの間にか引っ込んでいた。春也の顔がよく見える。見慣れた顔だ。
「これじゃどっちが弟だかわかんないな」
手を引かれながら僕が言うと、「双子だもん、関係ねえじゃん」と春也が言った。
「……そうかもな」
「あ、そうだ。兄ちゃんパワプロやんねー?気晴らし気晴らし!」
「自分の宿題はどうしたんだよ」
「それは兄ちゃんがやってくれるんだろ?俺代わりにパワプロ教えっからさ」
「やってやるなんて言ってない、手伝うって言ったんだ」
春也に引きずられて部屋へ入る。
もう二度と、泣きたくないと思いながら。
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[[犬好き×猫好き>25-159]]
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