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獰猛な羊×気弱な狼 ---- むかしむかし、ある所に狼がいました。 狼はその風貌からまわりの動物たちに恐れられ、長い間一人ぼっちでした。 「こんなに淋しくては生きていけない」と、狼はみんなに優しくすることに決めました。 ウサギも食べません、ヤギも食べません。 鹿も食べません、豚も食べません。 みんなと一緒に木の実を食べて、野原をかけて遊びます。 けれども強くて立派な狼は、とってもお腹がすきました。 「どうしよう、どうしよう」 泣くとお腹がすきました。 泣けば泣くほどすきました。 木の実を食べても力が出ません。 「このままではみんなを食べてしまう、また嫌われてしまう」 森のみんなに嫌われることを死より恐れた狼は、このまま一人でひっそりと、春まで眠ってしまおうと思いました。 寝床にしている木の穴の外ではウサギや豚や、ヤギや小鳥や鹿たちが、「狼さん」と呼んでいます。 「狼さん狼さん、川で一緒に遊ぼうよ」 「狼さん狼さん、力仕事を手伝って」 「狼さん狼さん、どうして返事をしてくれないの?」 「なーんだ、狼さん、僕達を嫌いになったのか」 狼は泣きました。 涙もないのに泣きました。 「違うんだ」 言葉も出ません、口も動きませんでした。 狼が目を閉じてじっとしていると、穴のさらに奥から小さな音が聞こえました。 開かなくなったまぶたの向こうに灯りがあるのが見えました。 どん、と音がして鼻先に、暖かい何かが置かれました。 触らなくてもわかります、それは大きな肉でした。 なんの動物かわからない、とても大きな肉でした。 狼は無心になって、命の最後の力でもって、口を動かして食べました。 起き上がって驚きました。 目の前にいたのは一匹の羊でした。 「なんだ、生き返ったのか。しぶといな」 そういって羊は、穴の奥へと引き返していきました。 狼も後を追いかけます。 「お前、狼のクセに。なにしてやがんだ」 羊が聞きました。 狼は答えません。 羊は続けて聞きました。 「食いもんなら穴の外に幾らでもいただろう」 狼が答えます。 「みんなは僕の友達だ!」 穴に響く大きな声に、羊は小さく笑います。 「友達なんて、くだらねえ。自分の腹も賄えないような奴が、なに甘っちょろいこと言ってんだ」 狼は聞きました。 「君の群れはどうしたの?羊は群れるものでしょう?」 羊が大きく笑います。 「群れってのは退屈でな。こういう方が気楽なんだ」 狼が聞きました。 「どうして僕を助けてくれたの?」 羊がにっこり笑います。 「それはね、いっぱい恩を売って、おいしくなったら食べるためさ」 続けて羊は「淋しいならここに住め」と、一枚の扉を蹴って開けました。 むせ返るような干し肉の香りに、狼はクラクラと眩暈を覚えました。 「『何の肉か』は気にしなくていい。一生お前を食わせてやるよ。もちろん、さっきみたいに狩りたてを生でな。これはただの保存食。いわゆる給料3か月分だ」 羊は狼の手を取って、鈍った爪にキスをしました。 狼さんは思いました。「これは悪い羊だ」と。 けれど気付いたときには涎を垂らして、首をぶんぶん縦に振っていました。 羊はほんのちょっとだけ、照れくさそうに笑いました。 こうして羊と狼は、暗い穴の底でいつまでも淫猥に暮らしましたとさ。 ----   [[ツンデレ攻め×ヤンデレ受け>25-079]] ----

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