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主人公×ラスボス ---- お互い、あと一撃で勝負が決まることを予感していた。 肩で息をし、額から流れる汗と血を乱暴に拭うと、二人は同時に動いた。 一瞬の交錯。 倒れたのは、全世界の民に恐れられ続けてきた魔界の王の方だった。 聖剣と呼ばれるそれが、禍々しい体を突き抜ける。王の体からは黒い霧のようなものが吹き出して、その聖剣へと吸い込まれていった。 世界に平和が訪れた後、青年は目を覚ました。 見慣れない、簡素な山小屋。彼が固いベッドに身を起こすと、すぐ近くの扉が開いた。 「お目覚めか?」 両手にトレイを持って現れたその男こそ、聖剣を手に魔界の王と戦ったその人に違いなかった。 それを理解した瞬間、青年は男を殺そうと跳ね起きた。だが男は、口元に笑みを浮かべるだけだ。 それは、男がすでに青年が無力であることを知っているがゆえのことだった。 「どういう…ことだ」 「まあ落ち着けよ、ウィルヘルム」 男は、かつて魔界の王と呼ばれた青年の名を口にした。 トレイを無造作に小さなテーブルに置いて、ベッドへ腰掛ける。 「あんたはもう、ただの人間さ。あの剣が、あんたの王としての汚れと力を吸い取った」 「…ならば、殺せ」 絞り出すような声でウィルヘルムは言う。 嫌だね、と男は首を横に振った。 「あんたは人間として、生きるんだ。俺と共に」 「ふざけるな」 「ふざけたりするもんか。じゃなきゃ、わざわざあの聖剣を探したりしない」 「どういうことだ」 「あんたを倒して平和を手に入れるだけなら、聖剣なんざ必要なかった。その息の根を止めるだけでいい」 簡単に言ってくれる、そう思いながらもウィルヘルムは薄く笑う。 「俺がそうしなかったのは、あの聖剣の噂を聞いて、もしかしたらあんたを人間にできるかもしれないと思ったからさ」 「…なぜ」 「言わなきゃわからないのか?」 未だ立ったままのウィルヘルムを正面から見つめて、男は言った。 「その血の一滴まで、俺のものになれ、ウィルヘルム」 「………リュージュ」 そこで、初めて青年は男の名を呼んだ。 ----   [[主人公×ラスボス>21-889-1]] ----

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