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二人暮し ---- 「おーい」 カンカン、という金属音。 控えめなそれに、明良は唸りながら顔を上げた。 視界に入った、見慣れた相棒の顔が一瞬だけ笑う。 「起きろよ。朝飯、できてる」 そう言うと、フライパンとフライ返しを手にした薫は、すぐに踵を返し寝室から出ていってしまった。 慌ててベッドから跳ね起き、その背中を追う。 広くはない部屋の、すぐ隣のダイニングテーブルには前日明良がリクエストした朝食のメニューが並んでいた。 「フワフワオムレツ!」 「食べたいって言ってただろ」 「うん」 自分と明良の分のコーヒーを淹れてから、薫は席につく。 向かいで明良が楽しそうに『いただきます』の挨拶をするのを確認してから、彼はカップに口を付けた。 ふんわりと盛り上がったオムレツに明良がナイフを入れると、中はとろりとした半熟。 ふと、視線を感じて顔を上げると、ほんの少し頬を染めて顔を逸らす薫の横顔が目に入った。 その理由を察して、苦笑しつつ目の前のオムレツを口に運ぶ。 「ん、うまい」 彼の一言で、薫の表情が明るくなる。 その事実に今度は明良が嬉しくなった。 「ありがとう」 「い、いいんだよ、別に。俺が作りたくて作ったんだから」 嬉しそうな笑みを噛み殺しながら、薫は忙しなくトーストを食べ始める。 今日は休日。 朝食が終わったら、素直じゃない恋人と一日の予定を立てよう。 そんなことを考えながら、明良は二口目のオムレツを口に入れた。 ----   [[二人暮し>21-869-1]] ----

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