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夏祭りの思い出 ---- 綿菓子でベタベタになって かき氷で舌を虹色にして 一番の思い出は、神社裏で、ひとつの大きな林檎飴を二人でかじったことだ。 その流れで初めてのキスをされた。よく覚えている。 「甘酸っぱい思い出だー」 仕事帰りに浴衣を纏った女の子たちが、下駄を軽やかに鳴らしながら歩いているのを見て、今日が地域の夏祭りなのだと知った。 高校2年、彼と結ばれて初めて行った夏祭り。その思い出を逡巡しながらひとりごちる。 「夏祭り」 連絡はない。というか、一人でだってここ何年も夏祭りなんて行っていない。 どうせ今年もいつも通りだ。自分に言い聞かせながら帰路を辿る足を速めた。 「うわ、なにこの匂い。」 安いアパートはドアを開ければすぐにキッチンだ。外から明かりが見えたから、彼が来ていることは分かっていた。 それにしてもこの甘いにおいは… 「お帰り」 「ただいま。キッチ汚すなよー」 彼がこの家で好き勝手しているのはいつものことなので、素通りしてクローゼットに向かう。 「で、なにしてんの」 手洗いうがいを済ませてからキッチンを覗くと、クッキングペーパーに拳くらいの林檎が串刺しになって、紅いべっこうの飴で包まれていた。 「りんご飴?」 「そう。」 はい。と林檎飴を口元に突き出され、少し怪訝に思いつつもその艶めく紅に歯を立てる。まだ温かいななどと考えている間に視界に影が落ちた。 林檎を挟んで、お互いに視線を絡ませる。 「……。」 シャクっと音がして彼が林檎をから顔を離した。口角を舌でなぞりながらにっこりと笑う。いつの間にか林檎も視界から消えていた。 「初チュー記念日、10年目」 遠くで打ち上げ花火の音が響いている。 ----   [[「ずっと一緒にいようね」なんて>21-839]] ----

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