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犬猿の仲 ---- 「細かい事にうるさいな。このくらい認めろよ」 「全然、細かい事じゃない。こんな高額経費は認められない」 「俺達はこれが仕事なの!」  営業の人間は本当に金にルーズだ。  なんてコストパフォーマンスの悪い人間達なんだろう、と話をする度に思う。  特にこいつはうるさい。我が物顔で道路を歩く大型犬のようだ。 ****************  後日。その大型犬が二人だけで話がしたいと俺の所に来た。 「お前……。C社の常務と知り合い?」 「なんで?」  嫌な予感がしたが、二丁目で顔を見たことがあるだけで、知り合いな訳ではない。 「常務がさ。何故か、お前と俺の仲がいいって誤解していて」 「それは凄い誤解だな」 「俺も……なのかって聞かれたんだけどさ……」  ばらしたのか。よりにもよってこいつにか。頭が痛い。 「お前って、そうなの?」 「そうだよ」 「あっさりしてるな、お前」 「だって、ばれたものは仕方ないし、向こうだって立場上ばれたくないだろうし、 ばらさないだろ」 「まあ、確かに……。それでな。断ってくれていいんだけどさ」 「何を?」 「食事でもどうかって」 「俺と?」 「いや、大丈夫だぞ! 安心しろ! 俺がうまく断っておくから!」 「断るって……。もったいないじゃん。5億の仕事だろ」 「俺を馬鹿にするな。そんなやり方で納得出来るか!」  いつもの接待三昧の方法とどう違うんだと思ったが、言うとまたうるさくなりそうなのでやめた。 「別にいいよ」 「え?!」 「一度でいいんだろ?」 「ええええ?!」  飲み食いくらいは常務が払いそうだし、あっちの経費になるなら高い酒を頼んじまえ。 「なんだ、そのルーズさは! 金にはうるさいのに!」  一番言われたくない奴に言われてカチンときたが、とりあえず耐えた。 「金にはうるさくないとダメだろ。金は使えば減る。体は減らない」 「ダメだ! よく考えろ。お前が会社の犠牲になる必要はない!」 「いや、別に犠牲になってるつもりは……」  何かに似てるなあと思ったら、家の近所にいる郵便局員にもワンワン吠えている馬鹿犬だった。  別にいいから。番犬いらないから。近所迷惑だから。 「俺はお前の事が正直嫌いだ! 嫌いだが、それとコレとは話が別だ! 俺はお前を守る! 俺にまかせろ!」  俺の話も聞かず、奴は部屋を出て行った。 *****************  更に後日。  商談は他社に持って行かれたらしいと他の部署から聞いた。 ああ、あの時に俺のいう通りにしていれば、何の問題もなかったのに。 本当にコストパフォーマンスの悪い奴だ。 「また、ずいぶんと高額の領収証たちで……」 「これが仕事なんで」 「5億の取引、棒にふったくせに」  ボソッと嫌みを言ってみた。だが、奴はニヤリと笑って俺に言った。 「猿知恵って知ってる?」 「はあ?」 「お前はうまく立ち回ってるつもりかもしれないけどな。生意気で本当に思慮が足らない。 経費の事だって、重箱の隅をつつくような事……、あ、今はそんな話じゃないか」 「ああ、そう。猿知恵で悪かったね」 「人間はそんなに捨てたもんじゃない。人間は、情もあるし、理性もあるし、 悪い事は悪いってちゃんと判断出来るんだ。そして会社は人間が動かしているんだ」 「だから?」 「5億はとられた。でも50億をとってきたんだから文句ないだろ」 「え?」 「酒っていうのは人間関係を作るんだよ。ちゃんとその領収証、落とせよ。経費だから」 「……え?」  得意げに立ち去っていくアイツの後ろ姿に、大型受注の成功をたたえる言葉があちらこちらから聞こえた。  ああ、本当にアイツには腹がたつ。 ----   [[女王様攻め×大型番犬受け女王様攻め×大型番犬受け>21-929]] ----

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