「15-109」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

15-109」(2009/03/29 (日) 15:11:40) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

ちいさな祈り ---- テニスコートの周りには、普段からは考えられないくらいのギャラリーがいた。 黄色い声を送る人も、写真を取る人も、何かを細かくメモする人もいた。 男性も、女性も、大人も、子どももいた。 しかし、その人たちの全ての目は、コートの中の2人に注がれていた。 その内の1人、前原祐二は私の息子だ。 流れる汗もそのままでコートの中を走り、懸命にボールを追いかけている。 一進一退の攻防が続き、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況にある。 パコーンパコーンとラリーの音が続く。 この1セットを取れば祐二の勝ちだ。 神様お願いします。どうか祐二を勝たせてやってください。 そして、全国大会へ行かせてやってください。 私は懸命に神に祈った。 それは、本当に小さな祈りだったのかもしれない。 しかし、これほどまでに何かを真剣に祈った事は無かった。 神様…神様… 息苦しそうにコートの中を駆け回る息子を私は見てはいられなかった。 辛かったらいつでも辞めても良いんだぞ。 私の夢なんか気にすることは無い。 そう言いたかったが、必死に走ってボールを打ち返す祐二には言えなかった。 「私は昔テニスをしていて、全国大会まで後一歩の所で負けてしまったんだよ。」 そんな事を話したあの日、祐二は私にはっきりと言った。 「お父さんの夢は僕が叶える!」 自分の夢を息子に押し付けてしまったと気付き、罪悪感に苛まれた。 だが、そんな息子の言葉が嬉しかった。 パコーンパコーンという音はまだ続いている。 ただうつむきひたすらに祈るしかなかった。 神様…神様… 一際大きな歓声が上がり、試合が終ったらしい。 ハッと顔を上げると祐二は息を切らせながら笑っていた。 そして、私に向かってVサインをした。 どうやら、私の小さな祈りは神に届いたらしい。 私は感動で涙が止まらなかった。 コートから出てきた息子の顔は、前よりも少し大人びて見えた。
ちいさな祈り ---- テニスコートの周りには、普段からは考えられないくらいのギャラリーがいた。 黄色い声を送る人も、写真を取る人も、何かを細かくメモする人もいた。 男性も、女性も、大人も、子どももいた。 しかし、その人たちの全ての目は、コートの中の2人に注がれていた。 その内の1人、前原祐二は私の息子だ。 流れる汗もそのままでコートの中を走り、懸命にボールを追いかけている。 一進一退の攻防が続き、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況にある。 パコーンパコーンとラリーの音が続く。 この1セットを取れば祐二の勝ちだ。 神様お願いします。どうか祐二を勝たせてやってください。 そして、全国大会へ行かせてやってください。 私は懸命に神に祈った。 それは、本当に小さな祈りだったのかもしれない。 しかし、これほどまでに何かを真剣に祈った事は無かった。 神様…神様… 息苦しそうにコートの中を駆け回る息子を私は見てはいられなかった。 辛かったらいつでも辞めても良いんだぞ。 私の夢なんか気にすることは無い。 そう言いたかったが、必死に走ってボールを打ち返す祐二には言えなかった。 「私は昔テニスをしていて、全国大会まで後一歩の所で負けてしまったんだよ。」 そんな事を話したあの日、祐二は私にはっきりと言った。 「お父さんの夢は僕が叶える!」 自分の夢を息子に押し付けてしまったと気付き、罪悪感に苛まれた。 だが、そんな息子の言葉が嬉しかった。 パコーンパコーンという音はまだ続いている。 ただうつむきひたすらに祈るしかなかった。 神様…神様… 一際大きな歓声が上がり、試合が終ったらしい。 ハッと顔を上げると祐二は息を切らせながら笑っていた。 そして、私に向かってVサインをした。 どうやら、私の小さな祈りは神に届いたらしい。 私は感動で涙が止まらなかった。 コートから出てきた息子の顔は、前よりも少し大人びて見えた。 ---- [[真面目な後輩×遊び人先輩>15-119]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: