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ちいさな祈り
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テニスコートの周りには、普段からは考えられないくらいのギャラリーがいた。
黄色い声を送る人も、写真を取る人も、何かを細かくメモする人もいた。
男性も、女性も、大人も、子どももいた。
しかし、その人たちの全ての目は、コートの中の2人に注がれていた。
その内の1人、前原祐二は私の息子だ。
流れる汗もそのままでコートの中を走り、懸命にボールを追いかけている。
一進一退の攻防が続き、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況にある。
パコーンパコーンとラリーの音が続く。
この1セットを取れば祐二の勝ちだ。
神様お願いします。どうか祐二を勝たせてやってください。
そして、全国大会へ行かせてやってください。
私は懸命に神に祈った。
それは、本当に小さな祈りだったのかもしれない。
しかし、これほどまでに何かを真剣に祈った事は無かった。
神様…神様…
息苦しそうにコートの中を駆け回る息子を私は見てはいられなかった。
辛かったらいつでも辞めても良いんだぞ。
私の夢なんか気にすることは無い。
そう言いたかったが、必死に走ってボールを打ち返す祐二には言えなかった。
「私は昔テニスをしていて、全国大会まで後一歩の所で負けてしまったんだよ。」
そんな事を話したあの日、祐二は私にはっきりと言った。
「お父さんの夢は僕が叶える!」
自分の夢を息子に押し付けてしまったと気付き、罪悪感に苛まれた。
だが、そんな息子の言葉が嬉しかった。
パコーンパコーンという音はまだ続いている。
ただうつむきひたすらに祈るしかなかった。
神様…神様…
一際大きな歓声が上がり、試合が終ったらしい。
ハッと顔を上げると祐二は息を切らせながら笑っていた。
そして、私に向かってVサインをした。
どうやら、私の小さな祈りは神に届いたらしい。
私は感動で涙が止まらなかった。
コートから出てきた息子の顔は、前よりも少し大人びて見えた。
ちいさな祈り
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テニスコートの周りには、普段からは考えられないくらいのギャラリーがいた。
黄色い声を送る人も、写真を取る人も、何かを細かくメモする人もいた。
男性も、女性も、大人も、子どももいた。
しかし、その人たちの全ての目は、コートの中の2人に注がれていた。
その内の1人、前原祐二は私の息子だ。
流れる汗もそのままでコートの中を走り、懸命にボールを追いかけている。
一進一退の攻防が続き、どちらが勝っても負けてもおかしくない状況にある。
パコーンパコーンとラリーの音が続く。
この1セットを取れば祐二の勝ちだ。
神様お願いします。どうか祐二を勝たせてやってください。
そして、全国大会へ行かせてやってください。
私は懸命に神に祈った。
それは、本当に小さな祈りだったのかもしれない。
しかし、これほどまでに何かを真剣に祈った事は無かった。
神様…神様…
息苦しそうにコートの中を駆け回る息子を私は見てはいられなかった。
辛かったらいつでも辞めても良いんだぞ。
私の夢なんか気にすることは無い。
そう言いたかったが、必死に走ってボールを打ち返す祐二には言えなかった。
「私は昔テニスをしていて、全国大会まで後一歩の所で負けてしまったんだよ。」
そんな事を話したあの日、祐二は私にはっきりと言った。
「お父さんの夢は僕が叶える!」
自分の夢を息子に押し付けてしまったと気付き、罪悪感に苛まれた。
だが、そんな息子の言葉が嬉しかった。
パコーンパコーンという音はまだ続いている。
ただうつむきひたすらに祈るしかなかった。
神様…神様…
一際大きな歓声が上がり、試合が終ったらしい。
ハッと顔を上げると祐二は息を切らせながら笑っていた。
そして、私に向かってVサインをした。
どうやら、私の小さな祈りは神に届いたらしい。
私は感動で涙が止まらなかった。
コートから出てきた息子の顔は、前よりも少し大人びて見えた。
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[[真面目な後輩×遊び人先輩>15-119]]
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