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出来の悪い兄貴 ---- 「愛だね」 潤二がはっきりとそう口にした時この酒豪とうとう酔い潰れたかとうとう酔い潰してやったぜハハハ、って具合で 多分俺が相当酔っていた。 俺は自分のこの酒に痺れた脳味噌と口が何を喋っていたかだって結構曖昧なのに。 ああ、そうそう、あの出来があんまりよろしくない兄貴分の話だっけ。 そーほんとヒデ兄どうしようもない。 こないだもクラブで酔い潰れて俺が部屋に運んだし、ちょっとでも目を離すとへらへらと誘いに、 そうあれだよ、こうなんていうの?セックス?そう、セックス! その誘いにだって乗りかねないし、あーもーほんとどうにかしてくれよ、って。 ごめんユキちゃん、俺もーしないからーなんてあのおっさん、絶対思ってないんだ。 いや、思ってんだろうけど忘れちゃうんだろうな。馬鹿なんだよ多分壊滅的に。酒で記憶なくすし。 いっそアル中になれ。アル中になったら面倒みてやる。どこにも行かせないで俺の部屋で浴びる程酒飲ませてあげるよ。 ……っておい。うわ、今一瞬考えて怖かった。無し無し。今の無し。そんなの冗談じゃない。 そうやって否定するように頭を振る。 「行雄病んでるねー」 ……お前楽しそうだな、なんか。 じゃあさ、行雄はどこが好きなの。英隆さんの。とか。何だそれ、どこのふざけたインタビューだよ。答えられるかそんな事。 だってヒデ兄は、さっきも言ったけど酒を飲めば絡み酒だし、スキンシップ過剰だからたまにすげーーーうっとーしいし、 最近は軽くいびきなんかもかくし、こないだ寝てる時エルボー喰らわされたし、ユキちゃんユキちゃんってうっさいし、 その癖最近随分忙しそうで、全然……って。おい。 「ほら、愛でしょ」 にっこりと潤二が笑った。あー俺、お前と付き合ったらよかったなーと一瞬言おうか迷ったけどやっぱり止める。 えーっと、なんだっけ。あーそー、あのおっさんのどこが好きかって。 好き、好き、好き……。ふわふわしてるし、ちょっと考え無しだし、ああ、でも。 「……笑った顔」 俺がもごもごと呟くのを、まあ潤二が聞き逃す筈もない。 お前ほんと怖いよな。いいけど。その笑顔とか特に怖いよな。別にいいけど。 そう、あのくしゃくしゃの顔で、俺の事呼んで、ユキちゃんユキちゃん、俺ユキちゃんの事好きだよーって。 そう言われると一瞬、俺の中に澱んでいる全ての黒いものがどうでもよくなるような気がする。 いや、気がするだけなんだけど。しかも一瞬。 ……でも、まあどうしようもない兄貴だけど。 あの笑顔、好きだな。 「潤二、お前ぜってー馬鹿だって思ってるだろ」 「思ってないよ」 まあ、なんていうかほんと、愛だよね、と潤二がにっこり笑いながら俺のグラスに焼酎を継ぎ足した。 ----   [[まわし>21-419]] ----

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