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本当にあった怖い話 ---- 鉄矢は、学生寮で俺の隣部屋に住んでいるクラスメートだ。 背がひょろりと高くて、その名の通り鉄のように冷徹で何事にも動じない、つまらない男。 暗くて友達もいないくせして無駄にイケメンなので、女子からは「クールでかっこいい」だとモテているところも気に食わない。 このむかつく野郎の鼻っ柱を折りたくて俺は何かとこいつにちょっかいを出しているのだが、俺が何を言っても何をしても、未だにこいつの鉄仮面を引っぺがすことは出来なかった。 だが、今夜こそは、奴の情けない悲鳴を聞けるに違いない。 今日もいつものように自分の部屋に鉄矢を呼び出した。 俺は、こいつの弱点になりそうな物を思いつくたびに、鉄矢を部屋に呼び立てるのだ。 ホラー映画とか、高難易度の格ゲーとか、学校で出た難しい宿題とか、変な味のするジュースとか… だが、こいつは俺が何を用意してもそつなくこなしやがる。 この間一緒にホラー映画を見た時だって、逆に俺の方がびびってしまって「今日は一緒に寝てくれ!」と半泣きで懇願してしまった。あんな醜態は二度と晒すもんか。 「……今日は、何の用だ」 鉄矢は相変わらずのしかめっ面をしている。 どうせ、いつもの用に何されてもへっちゃらだと思っているのだろう。だが、今日の俺は一味違うぜ。なにせ… 「俺の身に実際に起きた、恐怖体験の話だ。」 いや、正確には『起きている』と言った方が正しい。現在進行形なのだ。恐怖なう。 それも今まさに、俺達がいるこの部屋で起きていることだ。 今この瞬間ここにいて、さらに、隣に住んでいるお前にとっては他人事で済ませられる話じゃない。 「前置きはいいから、とっとと聞かせろ」 「なっ…!」 何たる余裕な態度! その気だるそうな様は、このくだらない茶番を終わらせて早く帰りたいとでも言いたげだ。 いいだろう。しかと聞きやがれ。ここ最近俺の身に起きている不可思議な出来事を――― ~恐怖体験その1『閉まっている窓』~ 俺は正直言っておっちょこちょいだ。出掛ける時、ドアの施錠はしても窓を閉め忘れるなんてことしょっちゅうだ。 だがここ最近はバッチリ閉められているのだ。自分で「忘れた」と確信した日でさえも。 変に思った俺は、わざと部屋の窓を全開にして出掛けてみた。 だが、帰ってくる頃にはやはり窓はきちんと閉められているのだ。 ~恐怖体験その2『家政婦の霊?』~ 俺は正直言ってズボラで不衛生だ。片付けるのが面倒くさくて、ゴミをそのままにして部屋から異臭が…なんてことしょっちゅうだ。 だがここ最近は気付けばゴミが片付いている。部屋に脱ぎ散らかした服なんかも、きちんと洗濯までされていた。 ゴミはきちんと分別までされており、燃えるゴミの前日には玄関に燃えるゴミの入った袋が置かれている有様だ。 害はないどころか助かってるのだが、不気味でしょうがない。 ~恐怖体験その3『消える下着』~ これが極めつけに怖い話だ。さっきも言った通り、服が勝手に洗濯されてきちんとたたんでしまってある事なんてしょっちゅうなのだが、 何故か下着…そう、俺の数あるパンツ達が度々消えるのだ!よりすぐりの勝負パンツから、母ちゃんが送ってきた謎のプリント入りパンツまで。 それも、ただ消えるだけじゃない、彼らは見事なローテーションによって再び俺の手に戻ってくるのだ。 一昨日はコレ、昨日はコレ、今日はコレ……といった具合に、バランスよく消えては戻るパンツ達。 ちなみに今日はお気に入りで長いこと使っている黒いボクサーがシフト担当らしい。 「どーだ!怖かろう!なんだったら今日は俺ん部屋に泊めてやってもいいんだぜ!?」 言いながら、鉄矢の顔を覗き見る。どうせいつもの鉄仮面なんだろうが――― 「て、鉄矢…サン…?」 「……ッ!」 驚くことに、鉄矢の顔は真っ青だった。冷や汗をダラダラかいていて、目頭には涙をためている。 待て待て。確かに怖がらせるために話したし、実体験ではあるのだが、ここまで効果があるだなんて思いもしなかった。 俺は鉄矢の仮面を剥がせたことを素直に喜べずにいた。だって、あからさまに怪しい。 「どうしたんだよ、お前……あっ!?」 鉄矢を問いただそうと彼の両肩に手を置いてがくがく揺さぶると、その拍子に彼のポケットからぽろりと鍵が落ちた。 俺のお気にのポケ○ンのキーホルダーが付けられていた鍵。ものすごく見覚えのある。 「か、返せっ……!」 俺がそれを手にした瞬間、鉄矢が素早く奪い返して、そのままうずくまっている。 二週間ほど前だったか。 鉄矢をいつもの様に部屋に呼び出したが、あまりの汚さに二人分座れる場所がなくて、結局一緒に掃除をすることになった。 その時に鉄矢が見つけたのがこれ、俺の可愛いポッ○ャマのキーホルダー付きの鍵。 「あーそれここの合鍵。使わないし、欲しいならやるよ」 「な、何言ってるんだお前…」 「そんで暇な時にでも片付けてくれたらこっちも万々歳!なーんてな」 「……馬鹿言うな」 と、そんな会話を交わしたのを思い出した。 冗談のつもりだったし、向こうもそれっきり鍵の話なんてしなかった。 だがよく考えたらあの日以来俺のポッ○ャマを見かけることはなかった。 俺の最近の恐怖体験談…家政婦ユーレイの正体って、もしかしなくても、鉄矢だったというわけか。 「っていうか、普通変だって思うだろ…毎日部屋キレイになってちゃ。俺が気付かないとでも思ったのか?」 「お前、バカだから……」 「あのなぁ!」 部屋がひとりでに片付いてて気付かないとかどんだけ俺をバカだと思ってたんだ、こいつは。 確かに、合鍵がなくなったことに気付かなかったことは事実なわけだが。 でも、だったら何でコソコソと俺のいない時を見計らって片付けなんかするんだ?何も悪いことしてる訳じゃ……って、 「ああっ!?お前、まさか!?」 「ちょっ……!や、やめっ…!」 俺は涙目で縮こまる鉄矢を押し倒して、ベルトを外してズボンを引きずり下ろす。 予想通り。 鉄矢の履いているパンツは、俺のお気にの黒ボクサーだった。 「……う…ッ、ぇえ…」 俺が鉄矢のパンツを見て絶句していると、ついに鉄矢はボロボロと泣き出してしまった。 倒れたままズボンを降ろされ泣いている男と、パンツを凝視する俺。なんだこれ。なんだこの状況。 「お前さ、なんでこんなことすんの?」 「…………でっ…き、ごころ、で…」 「出来心でクラスメートのパンツ履くか?ふつー」 「だっ、て………」 「お前、俺の事……好きなの?」 「…ッ!!」 その瞬間。鉄矢の泣き顔が一気に真っ赤に染まった。 それで、なんとなく理解した。 こいつは俺に片思いしていて? 合鍵を手に入れて? 好意で部屋を片づけはじめたけど、その時に俺のパンツが目に入って? ―――そして「出来心」で例のローテーションを始めてしまったという訳か。 なんてこった。 クラスメートの男にパンツ盗んで履かれていただなんて、霊よりよっぽど怖いぞ。 でも……それよりも怖いことは。 この、普段は冷静で無口なモテ男が、ぼろぼろ泣きながら頬を赤くしてうずくまってる姿を見て、 「かわいい、な…」 そう呟いてしまった、自分だった。 ----   [[顔以外は完璧な男と顔しかとりえのない男>24-919]] ----

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