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潔癖症だった攻め ---- 自分以外のものが不潔に思えて仕方のない時期があった。 例えば、ジュースの回し飲みなんてありえなかったし、ちょっとした物の貸し借りすら苦痛だった。 携帯用の除菌スプレーがお守り代わりだった。 潔癖症を隠したくて周囲から一歩退いていたら、「気難しい孤高の人」というレッテルを貼られていた。 お前と出会ったのは、その頃だ。 明るくて人懐っこくて、ぎこちない態度の俺にも屈託なく話しかけてきた。 お前は俺の対極にいて、俺の理想だった。うらやましかったし、憧れていた。 興味があると言っていたCDを貸した。「すげー良かった!」と笑顔で言われて、つられて笑った。 寒い冬の日、風邪気味だと言ったら巻いていたマフラーを渡された。ほんのり残った温もりが心地よかった。 お前の部屋で、二人で鍋をつついた。その日以降、誰かと同じ器から物を食べても平気になった。 除菌スプレーを持ち歩かなくなった頃、自分の欲を自覚した。 お前を俺だけのものにしたい、お前に触れたい、お前とつながりたい。 最初は信じられなかった。 今まで眠っていたそういう欲求が、一番身近なお前に向いただけじゃないかと思った。 自分の変な錯覚にお前を巻き込みたくないと思って、距離をおいた。 すごく身勝手な振る舞いだったと、今になって思う。 誘われるまま合コンに行って、女の子と知り合った。何度か二人で会って、そういう雰囲気になった。 でも違った。以前他人に感じていた、どうしようもない不潔感は消えていたが、ただただ「この子ではない」という違和感があった。 そこでようやく、俺は馬鹿な遠回りをしていたことに気付いた。彼女には、本当に申し訳ないことをした。 単純なことだ、順番が逆だったんだ。 潔癖症が治ったからお前を好きになったんじゃない、お前が好きでしょうがなかったから、潔癖症を乗り越えてしまったんだ。 本当はまだ、誰かと触れ合うと緊張する。だからうまくいかないかもしれない。それでも、俺は―― なおも言い募ろうとした彼の唇に、オレはそっと人差し指を押し当てた。 告白された時は、これ以上幸せなことはないだろうと思っていたのに、ヤバい、今、泣きそうだ。 訥々と語られたのは、彼の過去、彼の心、そして彼の変化の原因が他でもないオレという嘘みたいな事実。 「いいよ。おまえ相手なら、うまくいかないなんてありえねーもん」 言うなり、ガバリと抱き寄せられた。彼の鼓動が間近に聞こえる。 「ああ、本当に、お前はどこまで俺に甘いんだ」 耳元で囁かれて、思わず顔を上げる。目の前の瞳は、俺と同じくらい潤んでいて。 最初のキスは、二人分の涙の味がした。 ----   [[ワンコ攻め×ヤンデレ受け>24-879]] ----

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