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負けるわけにはいかない勝負
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幼なじみのあいつと再会したのは、なんの変哲もない、家具もない、監視カメラが四方にあるだけの、のっぺらぼうみたいな部屋の中だった。
一瞬で息が止まる。そんな再会。
負けるわけにはいかない勝負だった。負けた方には死が、生き延びた方には生が与えられる。それもまた、次の勝負へと送り込まれるだけの
生なのだけれども。だがそこでまた勝利を得られれば、その命は生き延びる。果ての無い次の勝負の時へと。
俺はもう、その繰り返しに疲れていた。気が狂いそうだった。涙だけはどうしても流れなかったけれど。
監視カメラの向こうには、この勝負の行く末に金を賭け、上質の酒を飲みながら愉しんでいる奴らがいる。
反吐が出そうだ。
わざと負けたなんて、ばれるわけにはいかない勝負だった。俺はうまくこなしたと思う。
床に膝を折った俺を見降ろして、どうして、とでも言いたそうに、泣きたそうに唇を震わせるお前がいる。
いいんだ。これでいい。俺はずっと待っていたんだ、この時を。
お前がその相手で俺は心底嬉しい。
監視カメラにはこちらの音声を拾う機能は付いていない。それは、観客がこのショウをさざめくように会話しながら愉しむためだ。
だから俺は言った。再会した瞬間に、お前へと告げる言葉は決めていたから。
左胸を、血に塗れた拳で強く二度叩く。
「この胸を貫け」
真っ直ぐに。ひたすらに。
あの頃も、そして今も言えないこの想いはずっと、俺の胸の中に閉じ込めてある。
この胸を、心臓を、お前の剣で刺し貫かれた時、俺は本当の勝負に勝てる気がするんだ。
優しすぎるお前の、永遠の贖罪の中で生き続けるという勝負に。
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[[ベタだけど>24-729]]
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