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鬱な夏休み ---- ともだちに会えないから夏休みは嫌い。 高校生になってまでそんな思いをするなんて。 「なあ、お前いつ戻ってくんの?」 夏休みの間、寮から実家へ帰省するルームメイトにそう声をかけた。 荷造り真っ最中。でっかいボストンバックがみるみるうちに膨れ上がる。 「そりゃギリギリまであっちにいるっしょ」 「デスヨネー」 「なに、俺に会えなくて寂しい?」 「うっぜ。マジうっぜ。早く帰ってくるならそれだけ課題写す余裕ができるだろ」 「馬鹿かオメー、絶対写させねえからな!」 げらげら笑いながら悪態を付き合う、こんな他愛もないやり取りも、1カ月半はお預け。 会いに行くには近すぎる。遊びに行くには遠すぎる。そんな距離。 「でもさー、俺は寂しいよ」 「――は?」 「地元帰っても超アウェイだからなー、去年帰って身に沁みたわ。  あっちはあっちでコミュできてるから入りにくいの。  居心地微妙に悪いし、何より、お前がいねーとつまんね」 一瞬絶句する。顔が赤くなるのを気合いで抑え込んだ。首から下が熱い。 なんなんだこいつ、馬鹿か。馬鹿か。 「ちょ、引くなよ」 「……や、引いてないけど、何それ俺ってば愛されてるう」 精一杯茶化してみたのに、何この沈黙。黙るなよ! 目が合っているのに感情が読めない。見たこともないくらい真面目な顔だった。 「俺は、お前に会えないの、寂しいよ」 もう一度、ぽつんと小さく繰り返して、荷づくりに戻った横顔を見つめながら なんだかこれ以上は踏み込めない気がして、黙ってしまった。 “俺だって寂しい” 、とは言えないまま。 長い、夏休みが始まる。 ----   [[自転車二人乗り>24-619]] ----

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