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「君は本当に馬鹿だなあ」
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それは、と彼は間を置いて、随分無駄なことをしたね…と言った。
私はその時、彼の物言いに感動していて言葉がすぐには入ってこなかった。
「やっぱり君は…!君は!完璧なんだ、そんな風に言い淀んでみたり…」
聞いている?と彼は私を見上げ顔をしかめた。
私は目の前のレンズの汚れにふと気がついてそれを拭き取る。
「えっ?ああ、無駄…?」
彼はそれまで取り組んでいたプログラムの読み込み作業をやめて、私のレンズ画面の位置を直してくれた。
「無駄なんかではないさ。こんなにもハイテク社会になったというのに、どんなガジェットでもやはりまだ足らない。はるかに便利なマシンが開発され続けているのに、事故も、トラブルも、ゼロにならない!」
しかめていた彼の顔は今や、呆れるような憐れむような表情になった。あまりに良く出来すぎているその「表情」に私は半ば見とれた。
「昔の物語にそういうのがあるのさ。夢のような道具を持ってさ、しかし必ずうまくいかないんだな。欠陥があるんだよ。しかしその道具の欠陥や条件を人間に知らせてくれる、そのマシンは、なぜか完璧なんだ」
彼は私の顔が汚れていることに気づいてか、レンズをのけようとした。確かに私は二日ほど洗顔していないのだ。
「まあ聞けよ、このレンズにしたってそうさ…折角眼鏡を掛けなくてもいいようになったというのにメンテナンスを怠ったり、汚れすぎてもそのままにして前がみえなかったりさ…つまり人間なんだよ!夢の道具を適正に使用できないのは…」
彼が顔を拭いてくれたのでそれだけで私はかなりさっぱりとした。
「だから私は考えたんだ。完璧な装置が一つあればいいって。
人間の、雑多な思考のノイズ、機微を全て演算して、マシンの誤用によるエラーを防ぐ為の…!
君は完璧なんだ。君さえ居ればいいんだ。
もう誰も工場でコンベヤに巻き込まれたり、
朝食マシンで火傷をしそうになったり、
移動マシンに潰されそうになったりしないし…」
食事をした方がいいよと彼が急に話題を変えたので、私は本題に戻した。「無駄だって…?何が無駄なんだ」
あのねえ、と彼はまた間を置いた、私の彼は本当に完璧だ。
それは人間がすることだよ…、と彼。
「解らないな、人間は駄目なんだ。人間だから、駄目なんだよ!どうしても」
彼はコーヒーと食事を私の前に用意し、こう言った。
どうやら人間はどんどん馬鹿になっているんだね…
そして、君は差し詰め馬鹿の急先鋒だよ…君は本当に…。
「解らないな。するとやはり君は私以上の頭脳になったんだ。つまり…」
彼が私を遮る。
ねえ、君が駄目だと断じる駄目な人間が僕は愛しいよ。
…君は本当に馬鹿だなあ。ああ、コーヒーが熱いから気を付けて。
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[[受けに乳首責めされて喘ぐ攻め>24-259]]
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