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ぼくはチームの顔なので、いつも笑っているのです。
勝てば全身で喜んで飛び跳ねます。嬉しくて嬉しくて仕方ないのでバク宙もやっちゃいます。
それを見たお客さんが喜んでくれると、ぼくはもっともっと嬉しくなります。
選手のみなさんが「お前はいつも明るくていいな」とほめてくれると、ぼくはその日うちょうてんです。
あれ?うちょうてんで良かったかな。とにかく、大はしゃぎです。
でもはしゃぎすぎてると、カントクに怒られます。ごめんなさい。
練習のじゃまにならないように、ぼくはそっと控え室へ帰ります。
負ければ全身でがっくりします。悔しいし悲しいけれど、勝負の世界はひじょうなのです。
でもぼくはチームの顔なので、どんなにがっくりしても顔だけは笑っています。
目をこすっても指が涙で濡れることはありません。だってぼくは涙が流せないのです。
心の中では本当に泣いているけど、心の中は見せることができません。
涙が流せないなんて、ぼくは実はとても薄情なやつなのではと悩んでいました。
ある負けた試合の日。ぼくはやっぱりがっくりして、通路の隅でしゃがんでいました。
そこへカントクがやってきました。
また怒られる!と思って、ぼくが立ち上がろうとすると、
カントクがぼくの頭を(本当は帽子をかぶってるので帽子を)優しくぽんぽん叩きました。
「そんなに落ち込むな。明日は必ず勝ってやる。だから泣き止め」って。
そのときのぼくはびっくりして、心の涙が本当に止まってしまいました。
カントクはエスパーなのか、それともレーカンがあるに違いありません。
ぼく自身にも見えない涙が見えているのですから。あれ?レーカン?ぼくゆーれい?
びっくりのまま顔をあげると、カントクはいつものしぶい顔よりもっとしぶい顔をしてました。
笑おうとして失敗した顔に見えました。この顔、きっと子供のお客さんが見たら怖くて泣きます。
でも僕は子供じゃないので、怖くありませんでした。
「なんだその顔は。どうせ、らしくないとか思ってるんだろ」
ぼくの顔を見てカントクが言います。
すごい。カントクすごい。ぼくの顔はずっと変わらないのになんでわかる。
それからはよく覚えてないけど、ぼくはそのときぶんぶんと何度も首を振った気がします。
(なんでそこは覚えてるかというと、それから三日間くらい首がずっと痛かったからです)
カントクはぼくを見てふっと笑って、ぼくの肩を拳でぐいと押しました。
「そうそう。お前はそうやっていつも元気に笑ってろ。そしたら俺たちも元気が出る」
この上ないお言葉でした。ぼくはさらになんども頷きました。首がぐきっとなりました。
ぼくはチームの顔なので、いつも笑っているのです。いつもいつも笑っています。
でも心から笑っていられるのは、皆が大好きだからです。
カントクのことはそれよりもっともっと大好きですけど、それは内緒です。
だってチームの顔ですから。
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[[「君は本当に馬鹿だなあ」>24-249]]
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