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親友だった2人が恋人になる瞬間 ---- 「ひどいよな、『実験、実験って、ちっとも会ってくれない!』って、電話でいきなりだもん」 「まあねぇ、4年生のこの時期、理学部なら誰でも卒論の追い込みだわな」 「でしょ!? 今も日付も変わろうかってのに、研究室に缶詰だよ?」 「森本んとこ、先生厳しいもんな」 「もう必要ないと思うんだけどな、この検証はさ。……ああ、ごめん、安田、それ5mlずつ分注な」 「ラジャ。優美ちゃんもな……美人だったんだけどな」 「わがままだよな……せめて、こうして安田みたいに実験を手伝ってくれればさ」 「そりゃ無理でしょう、学部が違う」 「気持ちの問題だよ。俺に会いたいって言うんならさ」 「つきあいたいって言い出したの、優美ちゃんからだもんな」 「3ヵ月か……初詣デートくらいしかやらなかったな」 「クリスマスはドタキャンだったな、そりゃ森本が悪い」 「だって、安田がインフルエンザだったんだから、仕方ない」 「知ってたら電話しなかったよ。それに関しては俺も悪かったと思ってる。  森本も、俺なんか放っておかないとね」 「インフルエンザだよ? 安田、死ぬかもしれなかったじゃんか」 「病院へ連れて行ってくれたことは感謝する。  でも、クリスマスという大事な日にお前に頼ってしまったことは、俺が無神経だった。  お前も優美ちゃんを優先すべきだった」 「何だよ、それ」 「はい、終わったよ分注。次に入れる薬品ちょうだい」 「ちょっと待てよ。俺、何が何でも優美ちゃん優先じゃないと駄目なの?」 「そりゃ、恋人なんだから当然でしょう……おい森本、薬品は? 終わらないと帰れないよ」 「安田は俺以外に電話かけたりしないでしょ!? 俺が行くのが当然じゃん!?」 「……誰か他にかけるよ、サークルの奴とか」 「でも、俺に電話してきたじゃんか!」 「それは熱で訳わかんなくて、日にちもわからなくて、森本しか思いつかなかったから」 「じゃあ、いいじゃん! 俺が優美ちゃんより死にそうな安田の所に行ったって、  お前に怒られることないよ、だろ?」 「はは、優美ちゃんに怒られるはずだよ。そんで、別れちゃうはずだ」 「何言ってるんだよ」 「森本って俺のことが一番好きなんだな。……俺もだ」 ----   [[誰も祝福してくれなくても>15-439]] ----

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