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猛獣使い ---- 猛獣使い……人には懐かないとされる猛獣をいとも容易く手懐け、 それを連れてあてどない旅を続ける孤高の存在…… 人々はそんな猛獣使いに、ある一種の憧れと畏れを抱いていた…… 「よぉ、"蛇使い”のエルじゃねぇか!相変わらず辛気臭ぇ顔だな!」 「"獅子使い”レオンか……」 馴れ馴れしく話しかけてきたこの男、馬鹿みたいに陽気で話していると疲れる…… --こいつと会わないように、反対方向に旅してきたのに…… 何故出会ってしまったのか……エルはふっと、溜息をついた。 「どうした?また今日はいつにもまして元気が無ぇじゃねぇか」 「いや……この暑さでチャッピーの元気がなくてな」 「ちゃ、チャッピー……?」 「……あぁ、あいつのことだ」 エルが指さした先に居るのは、大きな白蛇……エルの相棒だ。 「……あいつチャッピーって顔か!!?ネーミングセンス無いにも程が有るぞお前!」 エルの不機嫌そうな顔が更に曇る。……しかし、レオンは何ら気にする様子はない。 「俺の『アーダルベルト=マックイーン・流星金霞号』を見習え!猛獣使いたるもの、 相方には格好良い名前を付けるべしだ!」 「呼びにくい、長い、覚えきれん、ダサい。 ……猛獣使いたるもの、愛情を込めて簡潔で呼びやすい名を付けるべしだ」 「だっ、ダサいとは何だダサいとは!もうお前許さ……「おい、あれ……」 「何だよ全く……あ……」 エルの目線の先にあったのは、仲良くじゃれあう二人の相棒の姿。 ……傍目から見ると、食うか食われるかの死闘にしか見えないが。 「いいな、あいつらは……俺らと違ってさ、素直で、純粋だ」 「『俺ら』とは何だ……一緒にしないでもらいたいのだが。まぁ同意するが……」 レオンが二匹を見つめる眼差しはいつになく優しげだ。 ――こんな顔もできるんだな、こいつ いつしかレオンの顔をじっと見つめていた自分に気づき、エルは頭を振る。 「……よし!俺も素直になってみるかな!」 「それがいい。お前みたいな馬鹿は素直すぎるくらいで丁度いい」 ……いつもなら突っかかってくるはずのレオンが何も言わない。 真面目な顔をして、何処か遠くを見ている…… 「……何か言え、お前が静かだと気持ちが悪い」 「いや、その、俺さ……お前のことが、好きなんだ……」 ――何を言ってるのだこいつは!……あぁ、とうとう気でも狂ったか 「……本気だぞ」 「も、もう少しまともな冗談を言え……つまらん!」 流石のエルもこれには驚く。……レオンの発言にではない、自分にだ。 心臓の高鳴りが止まらない、馬鹿面だと思っていたレオンの顔がいやに格好良く見える…… 「あいつらを見てて思ったんだ……俺も、あんなふうにお前と二人で……」 「か、顔が近い!そ、その馬鹿面をどけろ!」 「お前と二人で、旅がしたいんだ……ダメか?」 ――ダメに決まっている! 「それもいい、かもな……」 言った後でしまった、と思った。心の声と本音が逆になっている。 レオンはどう思ったのだろうか、きっと阿呆面全開で喜んでいるに違いない…… 「……良かった、断られたらどうしようかと思った……っ」 ――泣いている、レオンが……それほど嬉しかったのか……? 「お、お、お前みたいな馬鹿が一人で旅をするなんてあ、危なすぎるだろう!俺は保護者としてついていくんだ!」 「うん、それでもいい!お前、しっかり者だし……」 顔をぐしゃぐしゃにしながら笑っているレオンが、すごく愛おしく感じた。 ――これからのことはわからないけど、取り敢えず、今は幸せだ。……俺も素直になってみようか 「レオン、俺も……お前のことが……」 ――fin―― ----   [[ツンデレ同士>24-209]] ----

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