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滅亡する王朝の少年皇帝の最期 ---- お願いします。 行儀の良い所作で頭を下げて、少年は言った。 やや窶れていながら、その表情は笑顔。 無邪気なようで、しかしどこか虚無感が漂っているように見えるのは、 大人の穿った見方であろうか。 憐れに思わないでもない、少年は傀儡でしかなかった。 しかしそれでも、犠牲は必要なのだと聞いている。 それ以上を考える事は、己の職分ではない。 誰にともなく思考を傾けながら、処刑者である男は剣を手にする。 少年は変わらず口元を柔らかく笑ませて、男を見つめている。 「何か、言い残すことは?」 定めに従って男はそう口にするが、少年は静かに首を振る。 「彼は…僕が言い残したい相手は、もうあなた方が連れていったのでしょう」 その言葉に、男は思い出す。 先日、同じく定めに従って問い、託された言葉を。 “御身の側に” たった一言で良いと、彼は言った。 「僕も、彼の側に連れていってください。  それだけでいいのです。それだけが、僕の望みです」 男は無言で頷くと、手にした剣を頭上へ掲げ、そうして職分を遂行した。 これで、全て。 全てが終わり…また全てが始まるのだろう。 それが新しい歩みであるのか、手垢の付いた繰り返しであるのか、 男には分からないし、興味も薄い。 人間一人、それぞれ生きて、それぞれ死ぬ。 それだけだと男は思う。 あの世など…… 考えようとして、止める。 それ以上を考える事は、己の職分ではないので。 ただ、あの少年を「憐れな傀儡」としていた己の考えに僅かな訂正を加え、男は処刑場を後にした。 ----   [[滅亡する王朝の少年皇帝の最期>22-909-1]] ----

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