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東南アジアから来た天才少年
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彼が来るまでは俺がこの研究所のエースだった。
昔から人付き合いが苦手だったし嫌われている自覚もあった。
しかし優秀であれば一番であれば陰口なんてものはただの僻みでしか無く、
俺は研究に没頭していればそれで良かった。
若干17歳の留学生である彼がそんな俺の傲慢さを叩き潰すように才能を発揮させたのは
俺を嫌っていた奴らにとってさぞ気持ちのいい快進撃だっただろう。
彼が邪魔だった。
ホームシックになって帰ってしまえばいいと彼の国の郷土料理店に連れて行った。
彼は喜び俺を日本の兄だと慕った。
思惑が外れ今後は日本料理ばかり食わせた。
彼は素直に日本の文化は素晴らしいと笑顔を見せて益々俺になついた。
そう俺は研究馬鹿であり、研究以外は馬鹿なのだ。
天才である彼には研究においても生活においても誰かの助けなんて必要無いはずなのに、
なぜか俺にまとわりついて俺の仕草や言葉を真似た。
しばらくして研究所の奴から丸くなったと言われるようになった。
誰が教えたのか「山本さんはツンデレだから」と彼が笑った。
確かに彼が来て以来、研究所の奴らとも話す機会は増えたが俺の本質は何も変わっていない。
狭いアパートにまで入り浸り、コタツを占領する彼が邪魔だった。
彼をコタツから追い出す為に今度はダウンジャケットを買ってやった。
彼はやっぱり素直に喜んだ。
春が来て彼は帰国した。
「同じ研究をしていればきっとまた会えるから」と彼は笑顔で去っていった。
その時、俺が号泣していたのは邪魔なヤツがいなくなって清々したのと彼に一度も勝てなくて悔しかったからだ。
そして次の春が来た頃、彼はこの研究所に戻ってきた。
本国に帰った彼はたった一年で成果を上げ、正式にこの研究所の職員として採用されたのだ。
天才の彼らしい計算通りの帰国という訳だ。
しかし彼の好きなコタツと鍋の季節はまだ先だ。
天才の唯一の計算ミスに俺はまた号泣してそして笑った。
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[[東南アジアから来た天才少年>22-789-1]]
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