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日韓友好 ---- 夕食を早食いして、洗面所でセミロングの髪を輪ゴムでポニーテールにまとめて、俺は家を出た 行き先は歩いて五分の距離にある築五十年の剣道場。十一月下旬。かなり寒い 短いが急な坂を上った先に旧式の電球型街灯に照らされた日本家屋が晩秋の夜に浮かび上がっている 黒船が浦賀に来航した嘉永六年生まれの俺から六代前のご先祖は、幕末の剣豪の生き残りたちから剣術を直伝された剣士だった 明治の終わり頃に土地を買って、後世に技を伝えるために剣道道場を開いた。数度の建て替えを経て道場は今に至る 実はこの道場の所有者は高校二年生の俺だ。自由に使えるという意味ではない。民法上、正式に俺の名義なのだ 前の所有者は道場開設のご先祖のひ孫、つまり俺の父方の祖父だ。その爺ちゃんが去年の春に急病で倒れた 爺ちゃんは死期が近いと思ったらしい。爺ちゃんの子供は一人娘の俺の母親だけ。娘婿の俺の父親は剣道には全く係わり合いがない 兄と妹が居るが、こちらも剣道に興味なし。ということで、爺ちゃん的には父親をスキップして俺が跡継ぎらしい 爺ちゃんは父親にもし権利が渡ったら道場を潰されて土地を駐車場にでもされかねないと思い込んだようだった 誰にも相談せずに司法書士に生前贈与の手続きを取らせて、土地と建物の名義を俺に変更してしまった もちろんその後の我が家ははちょっとした修羅場になった。ちなみに爺ちゃんはすっかり治って前よりも元気だ そんな爺ちゃん主催の剣道教室の練習のない日は、俺この道場を好きに使っていいことになっている 建物は平屋の日本家屋で板張りの床の広い剣道場が中央に位置し、付属する更衣室と給湯室、物置と十二畳の和室からなっていた 普段は全く使われていない和室を、俺は完全に自室にしていた。そこで静かに過ごすのが何よりも好きだった 道場に着いたらまず取り敢えず竹刀の素振りを一通りやろう。それをしないと気持ちが落ち着かない 終わったら給湯室でお茶を沸かして、冷蔵庫にしまってある水ようかんを食べよう。汗を流した後に食べる和菓子は最高だ その後は昨日買った「月刊 碁ワールド」掲載の注目の棋譜を並べよう。俺は剣道と同じくらい囲碁が好きなんだ 俺はそういう想定で剣道上の入り口の引き戸を開けた。鍵がかかっているはずなのに・・・開きやがった・・・ 玄関には黒いナイキのサッカーシューズが脱ぎっぱなしになっている。高校生にもなってきちんと靴を揃えて脱げんのか! 道場は暗かったが、和室はドアの下の隙間から光が漏れている。給湯室の電気もつけっ放しだ・・・嗚呼・・・ と、オレの到着に気付いたらしい。ドアが開いてドタドタと足音を立てながら走ってこちらに向かって来た 「せんぱーい! 遅かったねーっ! オレのこと愛しているなら放っておいたらダメじゃないかー!」 言いながらこちらに飛びついて来る。抱きつかれるとウザいので取り敢えず一発蹴りを入れた 「何だよー。ひどいじゃないかー。こんなに愛しているのにー!」 大好きなご主人様に邪険気味に扱われつつも、尻尾を振ってさらに愛想を振りまく大型犬以外の何者でもない この大型犬の名前はヨンという。韓国名も日本名もあるが、もう色々とウザくて面倒臭いので呼び方はヨンで統一している 父親は済州島出身の韓国人で母親は日本人。日韓ハーフで俺より一つ年下の高校一年生。生まれも育ちも日本だ 身長は167cm。俺より6cm低い。元々は俺の家の向かいのアパートに住んでいて、なぜだか俺に物凄くよく懐いた 幼稚園のときには俺のことをお嫁さんにすると喚き散らしたこともあった。あの頃はまだ無害でかわいかった ヨンの小学校入学と同時に一家は転居した。距離は遠くなかったが学校が別々になったため、それからは会うこともなくなった 再会したのは今年の春。俺が通う高校はサッカーの強豪校で近隣からガチでサッカーをやる男子たちが集まって来る その中の一人にこの大型犬は混じってやがった。それ以来、幼稚園以来の焼け木杭に火がついたのかなんかもう凄い ちなみにポジションは予想通りフォワード。協調性がなくてやたら前に出たがるので監督からよく怒られるらしい 「いつものことだが何でウリがここに居るニダ」 「七時頃にここを通ったら、先輩の爺ちゃんが居た。挨拶したら入れてくれた。待つなら部屋で待ってなと言われた」 そう言えば家を出る前に爺ちゃんが何か言ってような気がする。それにしても爺ちゃん・・・何てことしてくれんだよ・・・ 爺ちゃんは何だか分からないがこのヨンのことを妙に気に入っている。あーあ。静かな時間を過ごすのは絶対に無理だ ヨンは今日もサッカー部丸出しの格好をしてやがる・・・上は韓国代表の2010年W杯のモデルの赤いレプリカユニだ 下のこの紫のサカパンは・・・こないだサカユニの薀蓄を垂れてきたときに聞いたな。確かサンフレッチェ広島の今年のモデルだ あと赤と緑のソックスは・・・PORT・・・ああポルトガル代表のモデルか しかしこの大型犬は着れれば何でもいいのか? もうちょっと組み合わせとか考えようよ。老婆心ながら思うぞ それにもうそこそこ冷える時期なのに寒くないのか。せめてジャージを着るくらいすればいいのに・・・ なんて思いながらヨンの顔を見た。スポーツ刈りにつぶらな瞳で・・・よく見ると頬に茶色いものが付いている その瞬間にこれから食べるはずの水ようかんがヨンの腹の仲に収まっていることを悟った俺は、ヨンにもう一発蹴りを入れた 夜にこの部屋で二人きりになったら囲碁を打つことが多い。意外なことだがヨンは初段程度の碁打ちなのだ 小学生の頃に父親に無理に習わされたらしい。基本はバカだから大して強くない。注意力散漫だから簡単な読み抜けだらけだ 「謝依旻(台湾出身の女性囲碁棋士。凄く強い)よりちょっと弱いくらい」と棋力を自己申告されたときには爆笑した ぶっちゃけ五段の俺と通常の手合いで打ったら勝負にならない。五子局(かなりのハンデ)くらいでやっといい勝負になる 普段はうるさいヨンが珍しく黙って考えている。さすがに寒くなってきたのか上に青い部活ジャージをはおっている 「もう投げろって。どう考えたってウリの黒の大石は助かりません。盤面で五十目以上の差ニダ」 「うるせー! これから神の一手を打って華麗に凌いで逆転すんだから! ぜってーぜってーぜってーひっくり返す」 ヨンのいつもの投了寸前時の逆転宣言を聞き流しつつ、お茶をすすって俺は何気なく上を見た 天井は限りなく黒に近い焦げ茶色。日本の近代史がのしかかっているような重厚な色合いだ 目を戻すとまだ考えている。だからもう無理だって。いつも形勢を悪くしてから考えるから駄目なんだよ もう終わった碁なので盤面を見ても仕方ない。ふと何となく視線を右にやるとヨンの足が俺の目に入った やっぱガチでサッカーやっている感じのする肉のつき方だ。サカパンからはみ出たアンダースパッツから伸びる腿はぶっとい ・・・俺は何をやっているんだ・・・男の下腹部から腿をマジマジと眺めて一体どうするんだ・・・いかんいかんいかん! 「チクショー! もう終わりだー!」 ヨンはいきなり叫ぶとアゲハマ(取って別にしておいた石)を乱暴な手つきで盤の中央に置いた。終わった。投了だ 「なんで、いっつも負けんだよー! ていうかさ、先輩が強すぎんだよ。オレは弱くない。うんうん。オレは弱くない」 言い終わると床に大の字になった。 「せんぱーい。眠いからこのまま寝ていい?」 「寝るな、大型犬。寝たらひどいことするぞ」 「えーっ、ひどいことってなんだよー」 「とにかくひどいことだ」 俺は碁石を碁笥にしまいながら考えた。俺とヨンの関係は何なんだろう? 単なる幼馴染でもないよな。友人とも違う気がする 週に何回か夜に会って碁を打ったりお菓子を食べたりしてまったりと男二人で過ごす関係・・・当てはまる言葉が思いつかない ふと見るとヨンは寝息を立ててやがる。ああ、やっぱり寝やがった。囲碁の後はいつもヨンは眠り込んでしまう きっと普段は脳の使わない部分を起動するから疲労困憊になるんだろう。本当に小学生みたいなヤツだ しかし、こんなに無防備に眠りやがって。それになかなかかわいい寝顔してるじゃないか。俺が衆道家なら襲っちゃうぞ! なんてな・・・ 俺の頭のネジが飛んだ。理性というブレーキは飛んで行った。高二が欲情したときの瞬発力は凄いもんだ ヨンの上に馬乗りになり無理やりにキスをした。ヨンは驚いて目を覚ました 「お前だって、こうなることを薄々分かっていたんだろう!」 「せっ! せんぱい・・・せんぱい・・・」 ヨンは俺の豹変の様子に呆然としているようで、そのせいで体から力が抜けて動けないようだった。 俺は口だけじゃなく顔中にキスし、その最中に思いついて、一旦行為を止めた。ヨンはこちらを何とも形容し難い表情で見ている 俺は脇に置いてあったヨンの部活用バッグの中を調べた。今日の部活で使ったと思われる少し泥の付いた練習着が入っている やっぱりあった。白虎のエンブレムのついた韓国代表モデルのレプリカの白いサカパンと赤いソックス 俺はサンフレッチェモデルのサカパンとポルトガル代表モデルのソックスを脱がして、韓国代表モデルのレプリカを履かせた 俺の方も着ていたジーンズとトレーナーを脱いで、試合用の白の剣道着に黒い袴に着替えた ヨンは逃げもせずにじーっとしていた。ヨンがどういうつもりかは分からないが、俺は今になって後には引けない 「ヨン! 俺はお前のことをこれから犯す。本気でやる。覚悟はいいな」 ヨンは微かに笑って承諾するかのように頷いた。これは試合ではなく死合だ。使っているのは竹刀ではなく真剣だ その後のことは余り覚えていない。俺はヨンの上半身を舌で愛しまくり、太腿や脛を猫のように繰り返し甘噛みをした 一発目は右太腿から屹立したものを突っ込んで、履いたままのサカパンの中に放出した 自分でもよく分からないが、俺の液体で代表ユニを汚したいという感情が猛烈に湧き上がって来たからだ そしてサカパンとアンダースパッツを脱がして露になったあそこを無理無理しごいて二人同時に逝った 最後は俺が後ろから征服し、今度も二人同時に逝った 取り返しの付かないことになった。俺はどう責任を取ればいいんだ! 混乱して訳が分からない・・・ あの後、ヨンは半泣きで道場から出て行った。朝になってヨンの携帯に電話を入れてみたが留守電だった ヨンはガキだけども本当にいいヤツなんだ。それを俺は・・・自分がこんなに嗜虐的に振舞えるなんて思いもしなかった それにしても自分の行動の意味がよく分からない。どうして俺はヨンにわざわざ韓国代表のユニを着せたんだ?  それにこっちは剣士の正装に着替えて・・・やったことは一方的な強姦 俺はとにかく罪悪感と自己嫌悪の洪水に飲まれている。どうしてこうなってしまったんだ! 俺のしたことは犯罪だ。ヨンに告訴されれば少年院行きだな。それも仕方ない。俺が全て悪い・・・ 俺はそのまま部屋から出れなかった。家にはここから学校に直接行くと嘘の電話をし、学校には風邪で休むと連絡した そしてそのまま夕方になった。今日は運がいいことに丸一日道場使用予定が入ってなかった。 そろそろ家に戻ろう。ずっとこうしていることもできない。明日は午前中から剣道場は使われるはずだし・・・ 「せんぱーい。こんばんわー! 昨日は水ようかん食べちゃってごめんねー。コンビニで買って来たよー」 え? 「オレはねー、ぶっちゃけ、いつかこうなりたいと思ったし、こうなると思ってたよー」 ええ? 「ただオレの思ってたより早かったし、とにかく急なことでびっくりしちゃってさー」 えええ? 「ムチャクチャされたけど、基本的に嬉しかったよ」 えええええええええ? 俺は部屋から猛ダッシュで玄関に出て今日はインテルのユニ姿のヨンに抱きついた 「だからさ、先輩が持っているこの道場の合鍵が欲しいんだー! オレが好きなときにこの部屋に来れるようにしたいの」 えええええ? それは調子に乗り過ぎだろう! でもまあいいか! ----   [[140文字の恋>22-589]] ----
日韓友好 ---- 夕食を早食いして、洗面所でセミロングの髪を輪ゴムでポニーテールにまとめて、俺は家を出た 行き先は歩いて五分の距離にある築五十年の剣道場。十一月下旬。かなり寒い 短いが急な坂を上った先に旧式の電球型街灯に照らされた日本家屋が晩秋の夜に浮かび上がっている 黒船が浦賀に来航した嘉永六年生まれの俺から六代前のご先祖は、幕末の剣豪の生き残りたちから剣術を直伝された剣士だった 明治の終わり頃に土地を買って、後世に技を伝えるために剣道道場を開いた。数度の建て替えを経て道場は今に至る 実はこの道場の所有者は高校二年生の俺だ。自由に使えるという意味ではない。民法上、正式に俺の名義なのだ 前の所有者は道場開設のご先祖のひ孫、つまり俺の父方の祖父だ。その爺ちゃんが去年の春に急病で倒れた 爺ちゃんは死期が近いと思ったらしい。爺ちゃんの子供は一人娘の俺の母親だけ。娘婿の俺の父親は剣道には全く係わり合いがない 兄と妹が居るが、こちらも剣道に興味なし。ということで、爺ちゃん的には父親をスキップして俺が跡継ぎらしい 爺ちゃんは父親にもし権利が渡ったら道場を潰されて土地を駐車場にでもされかねないと思い込んだようだった 誰にも相談せずに司法書士に生前贈与の手続きを取らせて、土地と建物の名義を俺に変更してしまった もちろんその後の我が家ははちょっとした修羅場になった。ちなみに爺ちゃんはすっかり治って前よりも元気だ そんな爺ちゃん主催の剣道教室の練習のない日は、俺この道場を好きに使っていいことになっている 建物は平屋の日本家屋で板張りの床の広い剣道場が中央に位置し、付属する更衣室と給湯室、物置と十二畳の和室からなっていた 普段は全く使われていない和室を、俺は完全に自室にしていた。そこで静かに過ごすのが何よりも好きだった 道場に着いたらまず取り敢えず竹刀の素振りを一通りやろう。それをしないと気持ちが落ち着かない 終わったら給湯室でお茶を沸かして、冷蔵庫にしまってある水ようかんを食べよう。汗を流した後に食べる和菓子は最高だ その後は昨日買った「月刊 碁ワールド」掲載の注目の棋譜を並べよう。俺は剣道と同じくらい囲碁が好きなんだ 俺はそういう想定で剣道上の入り口の引き戸を開けた。鍵がかかっているはずなのに・・・開きやがった・・・ 玄関には黒いナイキのサッカーシューズが脱ぎっぱなしになっている。高校生にもなってきちんと靴を揃えて脱げんのか! 道場は暗かったが、和室はドアの下の隙間から光が漏れている。給湯室の電気もつけっ放しだ・・・嗚呼・・・ と、オレの到着に気付いたらしい。ドアが開いてドタドタと足音を立てながら走ってこちらに向かって来た 「せんぱーい! 遅かったねーっ! オレのこと愛しているなら放っておいたらダメじゃないかー!」 言いながらこちらに飛びついて来る。抱きつかれるとウザいので取り敢えず一発蹴りを入れた 「何だよー。ひどいじゃないかー。こんなに愛しているのにー!」 大好きなご主人様に邪険気味に扱われつつも、尻尾を振ってさらに愛想を振りまく大型犬以外の何者でもない この大型犬の名前はヨンという。韓国名も日本名もあるが、もう色々とウザくて面倒臭いので呼び方はヨンで統一している 父親は済州島出身の韓国人で母親は日本人。日韓ハーフで俺より一つ年下の高校一年生。生まれも育ちも日本だ 身長は167cm。俺より6cm低い。元々は俺の家の向かいのアパートに住んでいて、なぜだか俺に物凄くよく懐いた 幼稚園のときには俺のことをお嫁さんにすると喚き散らしたこともあった。あの頃はまだ無害でかわいかった ヨンの小学校入学と同時に一家は転居した。距離は遠くなかったが学校が別々になったため、それからは会うこともなくなった 再会したのは今年の春。俺が通う高校はサッカーの強豪校で近隣からガチでサッカーをやる男子たちが集まって来る その中の一人にこの大型犬は混じってやがった。それ以来、幼稚園以来の焼け木杭に火がついたのかなんかもう凄い ちなみにポジションは予想通りフォワード。協調性がなくてやたら前に出たがるので監督からよく怒られるらしい 「いつものことだが何でウリがここに居るニダ」 「七時頃にここを通ったら、先輩の爺ちゃんが居た。挨拶したら入れてくれた。待つなら部屋で待ってなと言われた」 そう言えば家を出る前に爺ちゃんが何か言ってような気がする。それにしても爺ちゃん・・・何てことしてくれんだよ・・・ 爺ちゃんは何だか分からないがこのヨンのことを妙に気に入っている。あーあ。静かな時間を過ごすのは絶対に無理だ ヨンは今日もサッカー部丸出しの格好をしてやがる・・・上は韓国代表の2010年W杯のモデルの赤いレプリカユニだ 下のこの紫のサカパンは・・・こないだサカユニの薀蓄を垂れてきたときに聞いたな。確かサンフレッチェ広島の今年のモデルだ あと赤と緑のソックスは・・・PORT・・・ああポルトガル代表のモデルか しかしこの大型犬は着れれば何でもいいのか? もうちょっと組み合わせとか考えようよ。老婆心ながら思うぞ それにもうそこそこ冷える時期なのに寒くないのか。せめてジャージを着るくらいすればいいのに・・・ なんて思いながらヨンの顔を見た。スポーツ刈りにつぶらな瞳で・・・よく見ると頬に茶色いものが付いている その瞬間にこれから食べるはずの水ようかんがヨンの腹の仲に収まっていることを悟った俺は、ヨンにもう一発蹴りを入れた 夜にこの部屋で二人きりになったら囲碁を打つことが多い。意外なことだがヨンは初段程度の碁打ちなのだ 小学生の頃に父親に無理に習わされたらしい。基本はバカだから大して強くない。注意力散漫だから簡単な読み抜けだらけだ 「謝依旻(台湾出身の女性囲碁棋士。凄く強い)よりちょっと弱いくらい」と棋力を自己申告されたときには爆笑した ぶっちゃけ五段の俺と通常の手合いで打ったら勝負にならない。五子局(かなりのハンデ)くらいでやっといい勝負になる 普段はうるさいヨンが珍しく黙って考えている。さすがに寒くなってきたのか上に青い部活ジャージをはおっている 「もう投げろって。どう考えたってウリの黒の大石は助かりません。盤面で五十目以上の差ニダ」 「うるせー! これから神の一手を打って華麗に凌いで逆転すんだから! ぜってーぜってーぜってーひっくり返す」 ヨンのいつもの投了寸前時の逆転宣言を聞き流しつつ、お茶をすすって俺は何気なく上を見た 天井は限りなく黒に近い焦げ茶色。日本の近代史がのしかかっているような重厚な色合いだ 目を戻すとまだ考えている。だからもう無理だって。いつも形勢を悪くしてから考えるから駄目なんだよ もう終わった碁なので盤面を見ても仕方ない。ふと何となく視線を右にやるとヨンの足が俺の目に入った やっぱガチでサッカーやっている感じのする肉のつき方だ。サカパンからはみ出たアンダースパッツから伸びる腿はぶっとい ・ ・・俺は何をやっているんだ・・・男の下腹部から腿をマジマジと眺めて一体どうするんだ・・・いかんいかんいかん! 「チクショー! もう終わりだー!」 ヨンはいきなり叫ぶとアゲハマ(取って別にしておいた石)を乱暴な手つきで盤の中央に置いた。終わった。投了だ 「なんで、いっつも負けんだよー! ていうかさ、先輩が強すぎんだよ。オレは弱くない。うんうん。オレは弱くない」 言い終わると床に大の字になった。 「せんぱーい。眠いからこのまま寝ていい?」 「寝るな、大型犬。寝たらひどいことするぞ」 「えーっ、ひどいことってなんだよー」 「とにかくひどいことだ」 俺は碁石を碁笥にしまいながら考えた。俺とヨンの関係は何なんだろう? 単なる幼馴染でもないよな。友人とも違う気がする 週に何回か夜に会って碁を打ったりお菓子を食べたりしてまったりと男二人で過ごす関係・・・当てはまる言葉が思いつかない ふと見るとヨンは寝息を立ててやがる。ああ、やっぱり寝やがった。囲碁の後はいつもヨンは眠り込んでしまう きっと普段は脳の使わない部分を起動するから疲労困憊になるんだろう。本当に小学生みたいなヤツだ しかし、こんなに無防備に眠りやがって。それになかなかかわいい寝顔してるじゃないか。俺が衆道家なら襲っちゃうぞ! なんてな・・・ 俺の頭のネジが飛んだ。理性というブレーキは飛んで行った。高二が欲情したときの瞬発力は凄いもんだ ヨンの上に馬乗りになり無理やりにキスをした。ヨンは驚いて目を覚ました 「お前だって、こうなることを薄々分かっていたんだろう!」 「せっ! せんぱい・・・せんぱい・・・」 ヨンは俺の豹変の様子に呆然としているようで、そのせいで体から力が抜けて動けないようだった。 俺は口だけじゃなく顔中にキスし、その最中に思いついて、一旦行為を止めた。ヨンはこちらを何とも形容し難い表情で見ている 俺は脇に置いてあったヨンの部活用バッグの中を調べた。今日の部活で使ったと思われる少し泥の付いた練習着が入っている やっぱりあった。白虎のエンブレムのついた韓国代表モデルのレプリカの白いサカパンと赤いソックス 俺はサンフレッチェモデルのサカパンとポルトガル代表モデルのソックスを脱がして、韓国代表モデルのレプリカを履かせた 俺の方も着ていたジーンズとトレーナーを脱いで、試合用の白の剣道着に黒い袴に着替えた ヨンは逃げもせずにじーっとしていた。ヨンがどういうつもりかは分からないが、俺は今になって後には引けない 「ヨン! 俺はお前のことをこれから犯す。本気でやる。覚悟はいいな」 ヨンは微かに笑って承諾するかのように頷いた。これは試合ではなく死合だ。使っているのは竹刀ではなく真剣だ その後のことは余り覚えていない。俺はヨンの上半身を舌で愛しまくり、太腿や脛を猫のように繰り返し甘噛みをした 一発目は右太腿から屹立したものを突っ込んで、履いたままのサカパンの中に放出した 自分でもよく分からないが、俺の液体で代表ユニを汚したいという感情が猛烈に湧き上がって来たからだ そしてサカパンとアンダースパッツを脱がして露になったあそこを無理無理しごいて二人同時に逝った 最後は俺が後ろから征服し、今度も二人同時に逝った 取り返しの付かないことになった。俺はどう責任を取ればいいんだ! 混乱して訳が分からない・・・ あの後、ヨンは半泣きで道場から出て行った。朝になってヨンの携帯に電話を入れてみたが留守電だった ヨンはガキだけども本当にいいヤツなんだ。それを俺は・・・自分がこんなに嗜虐的に振舞えるなんて思いもしなかった それにしても自分の行動の意味がよく分からない。どうして俺はヨンにわざわざ韓国代表のユニを着せたんだ?  それにこっちは剣士の正装に着替えて・・・やったことは一方的な強姦 俺はとにかく罪悪感と自己嫌悪の洪水に飲まれている。どうしてこうなってしまったんだ! 俺のしたことは犯罪だ。ヨンに告訴されれば少年院行きだな。それも仕方ない。俺が全て悪い・・・ 俺はそのまま部屋から出れなかった。家にはここから学校に直接行くと嘘の電話をし、学校には風邪で休むと連絡した そしてそのまま夕方になった。今日は運がいいことに丸一日道場使用予定が入ってなかった。 そろそろ家に戻ろう。ずっとこうしていることもできない。明日は午前中から剣道場は使われるはずだし・・・ 「せんぱーい。こんばんわー! 昨日は水ようかん食べちゃってごめんねー。コンビニで買って来たよー」 え? 「オレはねー、ぶっちゃけ、いつかこうなりたいと思ったし、こうなると思ってたよー」 ええ? 「ただオレの思ってたより早かったし、とにかく急なことでびっくりしちゃってさー」 えええ? 「ムチャクチャされたけど、基本的に嬉しかったよ」 えええええええええ? 俺は部屋から猛ダッシュで玄関に出て今日はインテルのユニ姿のヨンに抱きついた 「だからさ、先輩が持っているこの道場の合鍵が欲しいんだー! オレが好きなときにこの部屋に来れるようにしたいの」 えええええ? それは調子に乗り過ぎだろう! でもまあいいか! ----   [[140文字の恋>22-589]] ----

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