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俺は忘れた、だからお前も忘れろ
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あいつはあの時正体不明なくらい酔っ払っていて、俺はドラッグでぶっ飛んでた。
ちょっと多い量をキメて、つうかキめちまって結構血管が膨れ上がる感じに吐き気までもよおしてたとこだ。
ゲロと一緒に全部出ちまったさ。だから忘れちまったよ。と俺は言った。
言ったんだが。
「なぁ、マジで?マジで覚えてねぇの?」
なんでコイツはこんなに食い下がってくるんだ。
欠食児童みてぇなガリガリの体にありえない力を込めて俺の腕を掴む。
あんまり邪魔だったんで持っていたジャックダニエルでこめかみを押しのけた。
「覚えてねぇっつってんだろ」
その夜俺が、クラブのトイレに女を連れ込んでヤった後、
カウンターにいた馴染みの売人からいつものを買ってそれを吸って、それで部屋に帰ってきた。
そうすると俺と入れ違いに2人の女が部屋から出て行って、て事はだ。
汚ねぇ部屋の真ん中に酒臭い汚ぇガキが一人って事だ。
「おっかえり~」
あいつは意味もなくゲラゲラと笑って、素っ裸のまんまで俺に飛びついてきた。
これが胸のでかい女なら申し分ないんだが。
「な、キスしねぇ?キス」
いつだってどこだって構わず噛み付くこいつが、甘えるように言う。
俺は笑っていいぜと答えたんだ。だからって何の意味がある?俺とこいつの間に。何かが生まれるってのか?
まぁ、精々その内一緒に一人か二人の女を交えて楽しむ事があるかもしれないってくらいだ。
こめかみや、眼球の裏側が心臓みてぇにどくどく言っていた。
いい感じにきいているドラッグに俺は酩酊状態でくすくす笑うとあいつは軽く俺の鼻を噛んだ。
「マジで?じゃぁさ、口開けて」
俺はその通りにしてやった。抱きついてきたアイツは物凄く酒臭かったが、俺も似たようなもんだろう。
べったりと口とその周辺に引きずったように真っ赤な口紅の道。
「あんた、女とヤってきたろ」
「正解だ、なんでわかった?」
「香水くせぇ」
「お前もな」
ひとしきり笑って、俺は立っているのが面倒になったんで壁によろけた。壁も床と同じくらいに汚いんだ。
よくわからねぇ染みとか、はがれかけた壁紙とか。
全く冗談じゃねぇけど直してもすぐにこんなもんだろうし大体そんな金も無い。
そうすると被さるように思いっきり唇が噛み付いてきた。
俺はあいつの脇あたりを支えながら、それを受ける。入り込んできた舌が、俺の痺れたそれに絡みついた。
味なんかしねぇし、感覚だけがビリビリくる。
一度離れてもう一度、それがもう一度、と際限なく続く。いい加減面倒になってきて何回かの後あいつを押しのけた。
涎で口の周りがぐちゃぐちゃだ。
「もう寝ろ、坊や」
「……ムカつく奴だな、あんた!」
わかるだろ?これが俺達の親愛なるおやすみなさいの言葉だ。よい夢を、ベイビー。
そんな訳であいつが自分の部屋に消えた後俺はまた少し薬をやって吐いて、そんな事を繰り返したら朝だった。
カーテンも無い窓から差し込む太陽の光は、否応なく更に部屋の汚さを感じさせるがしょうがない。
ミネラルウォーター代わりに冷蔵庫にはこれしかないという酒を呷っていると、あいつが起き出してきた。
「俺にもくれよ」
「残念だな、飲んじまった」
逆さに振ってやる。一滴だって出てこない。俺の喉から胃に直通だ。
「なぁ、昨日のキスもっかいしようぜ」
「昨日の?」
実際、俺はそう言われるまで忘れてたんだ。
つまり、わかるだろう、俺にそれは重要じゃなかったし、他にする事がいっぱいあった。
ドラッグとか、吐くとか。その合間に考え事だとか。毎日変わる女とヤるくらいなもんで、
顔も覚えてない女達の間にこいつとのキスなんてすっかり埋もれちまうのがどうして間違った事なんだと俺は思う。
でもこいつは聞き返す俺に拗ねるように口を尖らせた。
「何だよ、忘れちまったの?」
「ああ、忘れちまったな」
そして、やたらと食い下がりはじめた訳だ。
「じゃぁ、いい。今すっから覚えて」
「はぁ?そんな気分じゃねぇよ、どけ」
「嫌だね。あんたが覚えてくれるまでする」
子供の強情さってのは、女のヒステリーくらい性質が悪い。殴りつけた方が早いかもしれない。
「いいから、口開けろよ。昨日みたいに誘えよ」
「覚えてねぇし、誘ってもねぇな」
「うっせぇよ!」
冷蔵庫に押し付けられ、噛み付くように唇が被さってくる。俺は思わずジャックダニエルを振り上げた。
忘れるとか忘れないとか、一体何がそんなに大事なんだ?俺にはわからないしわかりたくもない。
只、本当は忘れてねぇんだって事を読み取れない程ガキなこいつがムカつくだけだ。
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[[執事と僕>22-469]]
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