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紳士攻め×流され受け
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初めは彼女に連れられてやってきた。
あまりにも俺の服装がダサイといって、オーダーメイドの紳士服屋。
そうしてあれよあれよという間に仕立てることになったスーツは、
俺の手持ちで一番高い勝負服となり、彼女と別れた今も捨てられない。
「ネクタイですか」
そう言って声をかけてくれたのは、スーツの採寸もしてくれた檜山さんだった。
今の給料じゃとても二着目は仕立てられないが、檜山さんに会いたくて、
俺はちょくちょくこの店に小物を買いに来るようになっていた。
「今日のお召し物はとても良くお似合いですね。今日のものに合わせるタイなら、こちらの臙脂も宜しいかと」
「じゃぁ、それを」
褒めてもらったスーツも、実は檜山さんの見立て。
この店に通うようになっても一向にセンスが磨かれない俺を見かねたのか、
檜山さんが「買い物につき合って頂けませんか」と言って見繕ってくれたのだ。
以来、俺が身につけるものは殆ど檜山さんのアドバイスに従っている。
俺の服選びに毎回つき合ってもらうのに申し訳なくなって、
手料理を振る舞うようになったのはいつごろからだろうか。
いつの間にか、俺たちの間では一回の見立てでご飯一回、という暗黙の了解ができていた。
会計のあとで檜山さんに目で合図をしたら『今晩伺っても宜しいですか』というメールが入っていて、
テンションは一気に上がる。
「今日の料理もおいしかったです」
一緒に出したワインでほろ酔い加減になった俺は、ふらつく足でシンクに食器を置きに立つ。
「あぶないっ」
運よく食器は手にしていなかったが、頭を打ちそうになったところを間一髪檜山さんが支えてくれた。
「全く、あなたからは一秒も目を離していられない」
「ほんと、すいません…っつ」
頭は打たなかったが、腰をしたたか打ったようで、手でさするように押さえる。
「おや、腰を打ったのですか。痣にならないか確認してみましょうか」
「え、…は、はぁ」
戸惑う俺をしり目に、檜山さんの低い体温が脇腹に触れる。
「あ…のっ」
「人に触られるの、苦手でしたか」
頬に熱が集まる俺を見て、檜山さんが優しくほほ笑む。
「い…え…」
人に触られるのが、とかじゃなくて、触り方がエロイ気がするのが、
あまりに自然になんでもないことのように聞かれるので、俺の意識のしすぎかと思ってしまう。
その様子に、檜山さんは今度は小さく吹き出す。
「プレゼント、はしてませんが、服を見立てるのは脱がせたいからですよ。こういうの、お嫌いですか?」
「い…え…」
あまりにさらりと言われるので、思わず反射的に否定の言葉を言ってしまう。
事の重大さに気付いたのは翌朝だ。
「私のことを嫌いになりますか?」
「…いえ」
それでも檜山さんが嫌いじゃないのは、ちょっと不思議だ。
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[[紳士攻め×流され受け>22-429-2]]
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