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決して相容れない存在 ---- 葬式だった。 遺影は見慣れた顔だった。 夜中、昔馴染みの市外局番からの電話に出たら、どうやら岸田にただごとではないなにかがあったらしく、岸田んとこのおふくろさんが、声を殺して泣いていた。 いわゆる貧乏の端くれご立派なアルバイター様は、田舎への急な電車賃と、幼馴染への香典代ですっからかん。 喪服を買う金もなく、リクルート用の無地スーツを引っつかんで見飽きたクソ田舎へ帰った。 葬式だった。 遺影は見慣れた顔だった。 切り抜かれたお前の横には、俺が写っていたはずだ。 葬式だった。 どうやらそれが葬式だった、と思い知ったのは、帰りの電車の中だった。 泣いた。 財布に320円しか入ってないからではなくて。 岸田、お前が死んだから。 向かいの女に怪しまれるほど泣きながら、岸田の部屋でなくて良かったと思った。 一度だけ、夕陽にさされてキスをした、お前の部屋で泣いてたら、俺は戻れなかっただろうから。 葬式だった。 さよなら岸田、お前の煙は目に沁みた。 もう二度と、相容れない君。 二度とは相見えない君。 ----  

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