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攻め争奪戦
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はじまりは小学校の四年生だった。
いかにもネコ科肉食、わがままで奔放、女子が遠巻きに見るタイプの美少年。
そんな転校生に気に入られて、四六時中べったりされた。
そしたら幼馴染、地味だが優しく何事も一生懸命で、内向的な文学少年。
こいつが対抗するかのように、やはり四六時中べったりするようになった。
中学になると、二人のケンカが始まった。
やれ、「引っ込めオタク」だの「あっち行けよ不良」だの、俺を挟んでの口げんかだ。
誕生日のプレゼント、クリスマス、修学旅行の行動班(四人一組だったので、一緒になった奴には非常に申し訳ないことになった)、卒業式。
イベントというイベントが、二人の言い争いやら手作り弁当競争やら椅子取りゲームやらの記憶になっている。
高校に入ると、実力行使が始まった。
俺は疲れてきたので、二人の視線に気付かず告白してきたKYな女子と付き合い始めた。
二人が俺にまとわりつかなくなって一週間後の放課後、河原の土手で身を寄せ合って座っている二人を見かけた。
取っ組み合いの喧嘩でもしたのか、二人とも草まみれだった。
俺が彼女と別れた後、またも二人は俺にべったりするようになった。
ふと気付くと、幼馴染は髪型も服装もずいぶん垢抜けていた。
「あのヤンキー、最悪だ。出会い頭にヘアカタログ投げて来るし、人が選んでた服、横から奪ってこきおろしたあげく、この服渡してきた」
話しながら一緒に歩いていると、何人かが幼馴染を振り返った。
俺が受験する大学はそこそこの高ランクで、幼馴染には余裕だろうが、転校生には厳しかった。
これは腐れ縁も終わりかと思っていたが、放課後や休日にあの二人が真剣に勉強しているのを何度か見かけた。
桜咲く春、三人揃って同じ大学に合格した。
「あのメガネ、最悪だな。人が問題ちょっと間違えっとさ、『地元のバカ大学で指くわえてあいつの帰り待ってる?』とか言うんだぜ。
ムカつくからマジで勉強してやった、ザマァ」と、目を赤くした鼻声の転校生は言った。
幼馴染に転校生の合格を告げると、「あーあ、うっとうしいのがいなくなるチャンスだったのに。惜しい」とぼやいた。
俺に勉強会を見られていた事も、目が潤んでいる事も、気付いていないようだった。
大学に入った後、二人は一緒に暮らし始めた。お互いに抜け駆けしないように見張るためだそうだ。
俺はもうお前らに必要ないんじゃなかろうか……と言ったら、左右から優しく抱き締められた。
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[[異端審問官>23-719]]
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