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妹が、お前のこと好きだって
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「妹が、お前のこと好きだって」
「…………無理だろ」
突然の投げかけに真意を掴みあぐね、ようやっと言葉を返す。
「もし俺とお前が付き合ってます、付き合ってましたって知られてみろよ。
そしたら多分あいつまず泣くじゃん。それはめんどくせえよ」
そう言って様子を窺えば、顔はずっと手元の本に向けられている。
こいつら双子の兄妹は、二卵性だからそんなに似てないよと揃って言うけれど、
俺から見れば二人とも母親ゆずりの顔と、母親ゆずりの真面目さをそっくり持ち合わせていた。
「さすがに、親子丼ならぬ兄妹丼なんて勘弁したいし」
顔は、ずっと手元の本に向けられている。
何でもないように見えるけど、止まった手と対照的に目線がきょろきょろとせわしなく上下していた。
そのいかにも危うげな様を見て、ああまたかよとげんなりする。
自分の中の正道と現実がぶつかって、ときどきこいつは不安定になる。
こんな繊細なところも母親に似ている。繊細すぎて、俺達が高校の時に消えてしまった。
キスもセックスも仕掛けたのは俺からだけど、告白してきたのはこいつからだった。
――気が狂いそうなんだ。顔をそむけて、目に涙を浮かべて、そんな言葉で愛を告げた。
可哀そうな兄妹だとは思う。二人揃って、こんなろくでもない男が好きだなんて。
そんな俺の性格も、顔も、俺の父親に似ているらしい。おかげで小さい頃から祖父に嫌われていた。
血、って怖ぇなとなんとはなしに思う。
いよいよ奴は自分の内の罪悪感に耐え切れなくなったのらしい。
目が充血して、ぐっと涙が溜まる。ヤバい兆候だ。
だから俺は、あやすようにキスをして、忘れさせるように体をまさぐる。
「また……そんなくだらないことでごまかそうとして」
「ばーか。くだらなくて不毛で非生産的だからいいんじゃねえか」
だから笑え。そんな心の内が通じたのか、呆れるように微笑み返してくれたことに何よりも安堵する。
同じような顔をして、同じように真面目で、
同じようにめんどくさくて、同じようにろくでもない父親と繊細な母親の血を引いていても、
俺は何度だって、男であるこいつを選ぶだろう。
――気が狂いそうなんだ。
あの日刻みつけられた言葉が、俺の中でずっと繰り返されている。
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[[妹が、お前のこと好きだって>23-469-1]]
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