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勇気を下さい! ---- 「お父さん!勇気くんを僕に下さい!絶対幸せにします、お願いします!」 目の前で必死に頭を下げる青年を、私は複雑な気持ちで見ていた。 それなりに真っ当に育ててきたつもりだった次男が、幼馴染である一也くんにもらわれていく。 二人を興奮気味に見守る妻と、ふすまの向こうにいるであろう長男。 男女男男男。本日はお日柄も良くお父さん息子さんを僕に下さい系土下座。 自分のいる空間の奇妙さに軽いめまいを覚えながら、一緒になって頭を下げている次男を見る。 いつの間にこんなに大きくなったのか。 小さい頃から泣き虫で、長男にけしかけられては色々と危ないことをさせられていた。 妻に似た切れ長の目元は、笑うたび綺麗に下がる。 二人が一緒にいるところは、昔から良く見かけた。 勇気の目尻は幸せそうに下がり、一也くんもまた、彼の家族皆がそうであるように口を大きくあけて笑っていた。 これから先の不安や問題など、問うだけ無駄なのだろうと二人の姿から思い知らされる。 「律儀な男だね、君も」 そう呟くと、場が一層静まり返る。 次の言葉に威厳はどのくらい必要かと悩みつつ、神妙な顔をする二人をもう少し困らせてやろうとも思う。 皆にとって一世一代のイベントだ。 私はおそらくラスボスという奴だろうから、夕飯のことでも考えて、難しい顔をしていよう。 祝い事だからやっぱり寿司か? 勇気はやっても穴子は譲らんぞ、息子達。 ----   [[勇気を下さい!>23-189]] ----
勇気を下さい! ---- 「お父さん!勇気くんを僕に下さい!絶対幸せにします、お願いします!」 目の前で必死に頭を下げる青年を、私は複雑な気持ちで見ていた。 それなりに真っ当に育ててきたつもりだった次男が、幼馴染である一也くんにもらわれていく。 二人を興奮気味に見守る妻と、ふすまの向こうにいるであろう長男。 男女男男男。本日はお日柄も良くお父さん息子さんを僕に下さい系土下座。 自分のいる空間の奇妙さに軽いめまいを覚えながら、一緒になって頭を下げている次男を見る。 いつの間にこんなに大きくなったのか。 小さい頃から泣き虫で、長男にけしかけられては色々と危ないことをさせられていた。 妻に似た切れ長の目元は、笑うたび綺麗に下がる。 二人が一緒にいるところは、昔から良く見かけた。 勇気の目尻は幸せそうに下がり、一也くんもまた、彼の家族皆がそうであるように口を大きくあけて笑っていた。 これから先の不安や問題など、問うだけ無駄なのだろうと二人の姿から思い知らされる。 「律儀な男だね、君も」 そう呟くと、場が一層静まり返る。 次の言葉に威厳はどのくらい必要かと悩みつつ、神妙な顔をする二人をもう少し困らせてやろうとも思う。 皆にとって一世一代のイベントだ。 私はおそらくラスボスという奴だろうから、夕飯のことでも考えて、難しい顔をしていよう。 祝い事だからやっぱり寿司か? 勇気はやっても穴子は譲らんぞ、息子達。 ----   [[春を待つ>23-189]] ----

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