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持ってあげる
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失敗した、と思ったのは、地元の駅についてからだ。
正月位しか帰らないし、親の好きな物でも買って帰ろう、なんて張り切って、土産を買いすぎた。
ノリとか勢いもあり、もう何年も会ってない幼なじみとかの分まで買った。
それを一つにまとめた結果、土産物の詰まった紙袋の底が抜けた。
助かったのは、それが混雑したホーム内ではなかった事と、割れ物が無かったこと。
最悪だったのは、落ちて荷物がバラけた瞬間を、例の幼なじみにバッチリ見られた事。
「久しぶり。相変わらず面白いな、お前」
昔は可愛かった彼がイケメンに育った姿を見ると、時の流れは残酷だとため息が出る。
「笑ってないで手伝ってくれ」
ケラケラと笑う幼なじみを見上げながら、落ちたものを拾っていると、彼は肩をすくめて人混みの中に消えた。
薄情な幼なじみに憤慨しながら、どうやってこれを持ち帰ろうと考えていると、再び彼がやって来た。
その手には、どこかで買ったのか、新しい手提げ袋をいくつか持っていた。
「これ、使えよ」
「いいのか?」
「もちろん」
笑顔の彼に礼を言うと、今度は三つに分けて土産を詰めた。
すると直ぐに、幼なじみはその一つを手に、歩き出した。
「おい、何で」
戸惑っていると、不思議そうに首を傾げて彼は言った。
「だってこれ、俺用だろ。お前、まだ覚えてたんだな、俺好きなもの」
言われて慌てて他の二つをのぞき込むと、確かに手元にあるのは家族用のだ。
どこかニヤニヤしている幼なじみの顔に苛立ち、そいつが手に持っていた袋を、強引にひったくる。
そして、驚いている幼なじみに向かって、こう言った。
「これは後で、俺がお前ん所に持って行くんだ、勝手に持ってくな!」
言ってて、耳が燃えるように熱い。
幼なじみも、燃えるような赤い頬で笑っていた。
「だったら、お前の家族用を一つ持ってやるから、お前はそのままそれ持って、俺の所に来いよ」
言うなり、幼なじみは家族への土産を人質に取り、自分の荷物を放って行ってしまった。
仕方なく、彼の荷物を持ってやり、幼なじみの車に向かったのだが、そこでの一悶着は、また後ほど。
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[[とんでもない宴席>23-159]]
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