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お母さんみたい ---- 「オラとっとと顔洗ってメシ食えメシ」 寝ぼけ眼でリビングへ行くと、ごはんとみそしるのいい匂いがふんわりと 俺の鼻をくすぐる。そして聞こえて来る野太い声。これは夢だろうか。 ジムで知り合ったノンケの一哉さんに一目惚れをしたのは俺だった。 178cm70kgの平均的な体格の俺に比べて、一哉さんは190cm100kg、 握力80kg、背筋200kg越えの鍛え抜かれた身体に男らしい精悍な顔立ち。 それでも顎に生やしてるヒゲは触ると意外と柔らかい事を昨日知った。 そう、昨日、俺は、一哉さんとひとつになったというかなんというか まあぶっちゃけ口では言えないような夢のひとときが色々とあって、 なんだ、その……苦節2年、とにかく俺の想いは彼に通じたらしい。 鍛えてるだけあって、あらゆる意味で一哉さんはすごかった。 腰なんかもうがくがく。腕も筋肉痛でがたがた。そんな体位があるのかって ようなものまでやってたような気がするけど、夢中になってて覚えてない。 そして先程目覚めて隣にいるはずの恋人を捜して起きて来たら…と言う訳だ。 「なんだ、食わないのか?」 「いえっ食べます食べます!」 すでに椅子に掛けて待ってくれている一哉さんに声を掛けられて、 慌てて洗面所に飛び込む。赤くなっているであろう顔をざぶざぶと洗って 目の前の鏡を見ると、明らかにヤニ下がった自分の顔が映った。 こーの幸せ者め~。 いつも仏頂面と評される顔がこんな風になるとは、自分でも驚きだ。 セックスってのはすごいもんだなあ……と考えたところでふと気付く。 ……そう言えば、一哉さんはいつもと変わらないな……。 そういうもんなんだろうか?それとも俺とこうなったことを後悔して… いやいやいやいやそんなハズはない!だって昨日はあんなに… なんていうかまあその口でも身体でも証明してくれちゃった訳だし! でも、なんていうか…前から思ってたんだけど、どうも保護者っぽいっていうか、 俺の事を子供みたいに思ってるところがあるんだよな… もしかして、一哉さんああ見えて優しいから、子供のお願いを断れないから 俺とこういう事になっちゃった?それで後悔して、なかったことにしようとしてる? ぐるぐる考えながら、ちょっとしょっぱいみそ汁をずずーと啜ると、 「音立てて飲むな」と嗜められた。その台詞に、不安になってた心に ぷすりと刺が刺さり、しぼみかける心の言葉が洩れる。 「お母さんみたい……」 呟いた俺の言葉を聞いて、見た目を裏切る行儀よさで飯を口にはこぶ一哉さんが 箸を止めてん?と顔を上げた。言われた言葉を考えているのか、 もぐもぐと咀嚼して飲み込む。やはり表情は変わらない。 その顔を見続けるのが切なくて視線を伏せかけると、ぼそりと呟く声が聞こえた。 「……母親だったらお前のちんこなんて突っ込ませてやれねえだろ」 怒った様にそう言う一哉さんの耳がまっかになってるのに気付いて、俺はようやく破顔した。 ----   [[お母さんみたい>9-909-1]] ----

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