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小学生の息子×父親 ---- 「絶対今日を逃したらだめだよね。来週の日曜日にまた風が強いとは限らないよ!」 お父さんが、うれしそうに言いながら玄関の戸を開けた。 絶対暗くなるまでには帰ってくるのよ!お母さんの声を背中に受けながら、 鋭い音をたてる北風の中に、ぼくとお父さんは飛びだしてゆく。 お父さんが脇に抱えたゲラカイトが風を切る。走るとほっぺが冷たいけど つないだお父さんの手があたたかいから全然気にならない。 お父さんは毎週日曜日には、ぼくと絶対絶対遊んでくれる。クラスの友だちは、 日曜日、朝寝坊してるお父さんは、首にラリアットしても起きないから困ると 愚痴ってたけど、ぼくのお父さんに限っては絶対そんなことない。 お父さんと遊べる日曜がぼくは大好きだ。 近所の河原でカイトを飛ばすのは、風が強い日にやろうねってお父さんと ずっと約束してたことの一つだ。まずはお手本って、お父さんがカイトを 揚げてくれた。ぐんぐん揚がるカイトを眺めると、わくわくしてたまらない。 お父さんはどんな遊びでもすごく上手だ。ゲームも上手い。 「お父さんがふたりいたらいいのになぁ」 なにげなく言ったら、お父さんが急にぼくを見下ろして、それからえっと言った。 凧糸を持ってる手が、みるみるゆるんでくる。 「あっ、何してんのおとうさん、しっかり持ってなよ」 カイトが飛んでいったら大変だ。このあとぼくの番なのに。 「うん、持ってる……持ってるけどだけど、それどういうこと?ひろき?」 凧糸を、こんどはぎゅーっと握りしめながら、お父さんがまじまじとぼくを見る。 「どういうことって?」 心なしか、お父さんの顔が青い。 「お父さんがふたりって……何か不満なの」 いやに深刻な顔をしてお父さんがたずねてくる。ぼく何か変なこと言ったかな? 「何がって、もしお父さんがふたりいたら、ひとりぼくと結婚できるじゃん」 お父さんはお母さんのでしょう?会社にもいくでしょ。 お母さんのじゃなくて、会社にもいかないぼくだけのお父さんが欲しいんだもん。 それでさ、結婚したら毎日遊びにいけるじゃん。 顔色の悪くなったお父さんに、一生懸命説明する。 「それって……お父さんがふたりって……俺がふたりってこと?」 お父さんは急に気の抜けたみたいな表情になって、それから笑い出した。 「何だよひろきおどかすなよ」 まじめて言ってるのに、そんなに笑われるとちょっといい気ぶんしない。 「あれ、ひろき怒ったの?ごめん」 だけど、お父さんに頭を撫でられると、すぐにぼくは機嫌を直してしまう。 「じゃあ、お父さんもしふたりになれたら、ぼくと結婚してくれる?」 「ぶっ……してやるしてやる」 そう言うと同時にお父さんは、さっきの倍くらいの、大笑いをし始めたけど、 ぼくとしては約束がとりつけられたので大満足だ。 空の高いところで、カイトがぐるぐるまわりはじめた。次はぼくの番だ! ----   [[送り狼>9-859]] ----

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