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七時半過ぎを早朝という男と早起きの男 ---- 「……あのなお前、いつも言うけど、こんな時間から電話かけてくんなよ」 どうせまた、急いで言う必要などない様な、どうでもいい用事なんだろう。 幼馴染として十五年も過ごしてきた経験上、既に骨身に染みて分かっている。 こいつの『急用』は、家の前で猫の親子が寝てるとか、今年初めて朝顔が咲いたとか。 そんな、こちらが呆れ返ってしまうほど、心底下らない要件に決まっているのだ。 「だって、もう七時半だよ」 「もう七時半だよ、じゃねえよ。まだ、だ。まだ」 「まだ…、って。本当、ケーゴって朝に弱いね」 「お前が強すぎるんだ」 毎朝五時に起きているような、人外の化け物と一緒にしないでほしい。 俺は、いたって普通の人間なだけだ。 「……で、用がないなら切るけど」 そうだ。まだ、起床時間まで三十分以上ある。 俺はまだ、このぬくぬくとした暖かい羽毛布団の中でまどろんでいたい。 誰であっても、俺の幸福な時間を奪う権利などない。 「外見て、外! 雪だよ、初雪!!」 「それで?」 それがどうした。雪なんぞ、ただの気象現象だ。 この季節なら珍しくもない。そんなに興奮するようなことでもないだろう。 「だから、早く出てきてよ! ケーゴんちの庭ならカマクラ作れるでしょ!?」 ……まさか、登校までの間に作れってのか。しかも俺に、手伝えと。 人を無理やり叩き起こしておいて、そのうえクソ寒い中強制労働を? 馬鹿げてる。誰がお前なんかの言うことを聞くか。 断ってやる。今からもう一眠りするから諦めろ、って。 もうこれ以上人の睡眠を妨害すんな、迷惑だ、って。 そう、あいつに……。 ……って、おい、俺の腕。いつの間に掛け布団を跳ね除けてるんだ。 それから足。どうしてこの寒さの中、嬉しそうにベッドから跳ね起きてるんだ。 そして、口よ。明らかに、A級戦犯は、お前だよお前。 何で「分かった分かった」だの、「すぐに行くから」だの、思ってもないこと言ってるんだ。 ----   [[昼行灯>9-769]] ----

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