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お墓参りの帰り ---- さっきから小さな足音がついてくる。 振り返るのがこわい。 逃げるのもこわい。 (大丈夫。きっとばーちゃんが守ってくれるから) 最後にばーちゃんから貰ったお守りをギュッと握りしめて、何度も自分に言い聞かせていた。 今日は三年前に死んだばーちゃんの命日だった。 お墓には花とまんじゅうだけで、お線香の煙も寂しかった。 去年は三回忌で、一昨年は一周忌だった。 父ちゃんも母ちゃんも『今年は特別じゃないからさみしいね』って言ってたのに。 でも、ぼくがいるからね。 ばーちゃんの大好きだったビールと、いい匂いのするお線香を、お年玉の残りで買って来たよ。 ばーちゃんに『また来るね』って言って、お寺から出るときに気付いた。 さっきからずっと、誰かが後を歩いてる。 ぼくが早足になると、足音も速くなる。 ゆっくりにすれば、ゆっくりになる。 おばけが出るのは夜のはずなのに……。 きっとばーちゃんが助けてくれるって、握ったお守りを胸に抱きしめた。 でも、そのとき…… 「あのー、えーと……」 「う、うわーーーーん!ばーちゃーん!助けてー!」 低い声といっしょに肩に乗った手で、我慢してたこわさが破裂した。 思いっきり走り出そうとしたのに、大きな手に捕まえられる。 手や足を振り回して逃げようとしたけどビクともしない。 「うう、……ばーちゃん、助けてよ」 「ボクはいつでもじーちゃんを助けるよ?」 聞こえた声は聞いたことのない声。 でも、ぼくを『祐二』とか『祐ちゃん』じゃなくて『じーちゃん』って呼ぶのはばーちゃんだけ。 「ばー、ちゃん?ほんとに?」 手も足も動かなくなって、体が凍ったみたいに固まった。 振り返ったら本当にばーちゃんがいるの? 「うん。本当に双葉だよ。ボクがじーちゃんに嘘なんて吐けるわけないじゃない」 いつもの言葉。 振り返れば、きっといつもの笑顔。 だから『なんで大きいの?』とか『ばーちゃんはお化けなの?』とか、みんなみーんな吹っ飛ばして抱きついた。 ----   [[あの星取ってきて>9-739]] ----

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