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ふみなさい ---- 「ホントに踏んでいいの?俺でいいの?」 「いいって言ってるだろ。早く踏めよ」 裕人と俺が今見つめているのは、パソコンだ。 サークルの連絡と親睦の目的で作られたパスワード制のHPだ。 管理人は裕人。メンバー数50ほどの一大学のサークルのHPにしては本格的だ。 何故か大学の全景、雑多な部室の風景などのフォトコーナー、 メンバー全員のプロフや連絡掲示板、画像アップもできるなんでもBBS、ご丁寧にチャットまで備えている。 webデザイナーを目指している裕人らしくセンス良く効率的に配置されたページは使い勝手が良い。 しかしせっかくのBBSやらチャットは開店休業状態。 週に2、3度顔合わせるのに、わざわざネットにまで出向いて親睦をあたためようなんて輩はそういない。 せいぜいスケジュールの確認に訪れるくらいだ。 なんでもBBSには、裕人のつぶやきや先日行ったという北海道旅行の写真などが虚しくアップされているだけだ。 何故かいたたまれず、ある日、チャットに足跡くらい残してやろうと入ったところ、 ちょうど管理中だった裕人に見かった。 サークルではあまり話したこともないけど裕人の楽しいおしゃべりに俺はすぐにハマった。 以来、ほぼ毎日深夜一時は二人のチャットタイム。 そして、今日も俺が訪れたら、トップのカウンターが999を示したのだ。 900を過ぎたあたりからトップページには 『記念の1000を踏んだ人は申し出て下さい。管理人より愛を込めてささやかなプレゼントをあげちゃいまーす♪』 と大々的に書かれてあった。 そんなプレゼントに深い意味はないと思いつつも、誰かに渡るだろうそのプレゼントが、 いやプレゼントを貰うだろうその誰かが気にかかっていた。 一瞬もう一度リロードしてしまおうかと頭をよぎった。 しかし気にしているのを見透かされそうな気がして、急いで裕人の待つチャットに入ったのだった。 「だからもう一回トップに戻ればいいじゃん。プレゼントが何か気になるんだろ?」 「気になるわけじゃないけど、何かなぁと思っただけ」 「だから踏めよ。そしたらお前のもんだ。明日会ったら渡すから」 「俺でいいんだね?じゃ踏むよ、ホントに踏むよ!」 翌日待ち合わせのファミレスで、俺は小さな切符を貰った。 踏んだのが誰でもこれあげちゃうんだと思うと複雑だった。 「それからこれも。はい」 「なに?カップメン?」 「そう、北海道限定ウニ入りカップメン 。ホントはプレゼントはこのカップメンだけなんだ」 「じゃあ、この切符は?」 「それは大智に渡したくて買ったんだ。でもへんだろ、いきなりそんなの。渡しそびれちゃってさ」 「これ俺に?。」 「そうだよ。もう廃線になった国鉄時代の駅の切符のレプリカだから使えないけどね。  BBSの写真見た?あの廃駅が記念館になってて、大智に渡したくて買ったんだ。  ほら、おそろい。キリ番踏んでくれてサンキュな」 俺は手の中の切符が、どんなプレゼントより愛しく思えた。 切符にはこう書かれていた。[愛国→幸福]と。 ----   [[ふみなさい>9-699-1]] ----
ふみなさい ---- 「ホントに踏んでいいの?俺でいいの?」 「いいって言ってるだろ。早く踏めよ」 裕人と俺が今見つめているのは、パソコンだ。 サークルの連絡と親睦の目的で作られたパスワード制のHPだ。 管理人は裕人。メンバー数50ほどの一大学のサークルのHPにしては本格的だ。 何故か大学の全景、雑多な部室の風景などのフォトコーナー、 メンバー全員のプロフや連絡掲示板、画像アップもできるなんでもBBS、ご丁寧にチャットまで備えている。 webデザイナーを目指している裕人らしくセンス良く効率的に配置されたページは使い勝手が良い。 しかしせっかくのBBSやらチャットは開店休業状態。 週に2、3度顔合わせるのに、わざわざネットにまで出向いて親睦をあたためようなんて輩はそういない。 せいぜいスケジュールの確認に訪れるくらいだ。 なんでもBBSには、裕人のつぶやきや先日行ったという北海道旅行の写真などが虚しくアップされているだけだ。 何故かいたたまれず、ある日、チャットに足跡くらい残してやろうと入ったところ、 ちょうど管理中だった裕人に見かった。 サークルではあまり話したこともないけど裕人の楽しいおしゃべりに俺はすぐにハマった。 以来、ほぼ毎日深夜一時は二人のチャットタイム。 そして、今日も俺が訪れたら、トップのカウンターが999を示したのだ。 900を過ぎたあたりからトップページには 『記念の1000を踏んだ人は申し出て下さい。管理人より愛を込めてささやかなプレゼントをあげちゃいまーす♪』 と大々的に書かれてあった。 そんなプレゼントに深い意味はないと思いつつも、誰かに渡るだろうそのプレゼントが、 いやプレゼントを貰うだろうその誰かが気にかかっていた。 一瞬もう一度リロードしてしまおうかと頭をよぎった。 しかし気にしているのを見透かされそうな気がして、急いで裕人の待つチャットに入ったのだった。 「だからもう一回トップに戻ればいいじゃん。プレゼントが何か気になるんだろ?」 「気になるわけじゃないけど、何かなぁと思っただけ」 「だから踏めよ。そしたらお前のもんだ。明日会ったら渡すから」 「俺でいいんだね?じゃ踏むよ、ホントに踏むよ!」 翌日待ち合わせのファミレスで、俺は小さな切符を貰った。 踏んだのが誰でもこれあげちゃうんだと思うと複雑だった。 「それからこれも。はい」 「なに?カップメン?」 「そう、北海道限定ウニ入りカップメン 。ホントはプレゼントはこのカップメンだけなんだ」 「じゃあ、この切符は?」 「それは大智に渡したくて買ったんだ。でもへんだろ、いきなりそんなの。渡しそびれちゃってさ」 「これ俺に?。」 「そうだよ。もう廃線になった国鉄時代の駅の切符のレプリカだから使えないけどね。  BBSの写真見た?あの廃駅が記念館になってて、大智に渡したくて買ったんだ。  ほら、おそろい。キリ番踏んでくれてサンキュな」 俺は手の中の切符が、どんなプレゼントより愛しく思えた。 切符にはこう書かれていた。[愛国→幸福]と。 ----   [[ふみなさい>9-699-2]] ----

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