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記憶の中で苦しめる人
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「好きだ」
舞い散る雪のなかでそう告げた。
チラチラと舞う雪の中のアイツは堪らなく美しかった。
雪にさらわれてしまいそうだった。
街灯の光はまるでスポットライト。
一枚の絵画か舞台のワンシーンのように目に焼き付いている。
今も思い出すだけで……
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
「な、なんだよ」
思い出すだけで恥ずかしい!
なんださらわれるって。
スポットライトとか言ってんじゃねえ。
何処の夢見がちな乙女だよ!
「いきなりどうしたんだよ」
「……恥ずかしい過去を思い出した」
恥ずかしい。
なんであんな風に思えたんだ。
コイツが儚げなのは外見だけで中身が全く違う事だって知ってたのに。
「恥ずかしい……ああアレか?告白の時の……」
「思い出すなー!」
「無理。思い出した。いきなり真剣な顔してさぁ」
「止めてくれー!」
顔から火がでるとはこの事だ。
一刻も早く記憶から抹消したいのに寧ろどんどんハッキリとしてくる。
「お前よくもまあ、それだけ過去のネタで苦しめるなあ」
「うるさい」
恥ずかしいもんは恥ずかしいんだ。
「もう消せないんだから諦めろ」
諦めたくても思い出しちまうんだよ。
思い出すと恥ずかしく思わずにいられないんだ!
「……なんでそんなに否定するんだよ」
「恥ずかしいからに決まってんだろ」
「なんで?」
「は?」
「なんでそんなに恥ずかしいワケ?そんなに告白した事後悔してんの?」
急に沈んだ声に前を向くと、泣きそうな顔があった。
「勢いで言った事後悔してんだろ」
「ち、ちがっ」
「違わないだろ!お前はアレを無くしたいんだ」
目が真っ赤になっていく。
「……違う。告白は消すつもりはない。ただ……」
「ただ?」
「ただ表現が恥ずかしいんだよ!しかもソレをお前が憶えてる事が!」
「いいじゃねえか。『貴方をこの腕に閉じ込めてしまいたい……』くらい」
「言うなー! って、アレ?」
コイツの表情は至って普通。
寧ろ機嫌いい?
「……嘘泣き?」
「あたり」
こんちくしょー!
また騙されたまた騙されたまた騙された。
こういう奴だって知ってんのに! 「まあ、そう照れるなって」
「照れじゃなくて恥ずかしいんだ」
「恥ずかしくてもさ、オレは嬉しかったから」
「う」
「お前に好きって言われた幸せな記憶だからずっと憶えててやる」
惚れた弱みはずっと忘れられないらしい。
きっとこんな風に思い出はこれからも増えていく。
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[[年下の先輩>9-629]]
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