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男ばかり四兄弟の長兄×姉ばかり四姉弟の末弟 ---- 小学校の4年生の時、クリスマスプレゼント何がいいかって尋ねられて、 即座に答えたのはセーラ/ームーンのステッキだった。攻撃するヤツ。 ほんとはマーズに一番あこがれてたけど、おふだはちょっとなぁって言う感じで。 そんな俺は、上に三人の姉がいる、4人姉弟の末っ子だ。 父さんは俺に常々「ぼく、じゃ無くってさ、俺って言ってみ?そっちの方が かっこいいからさ」と、一人称を指示してみたり、なんだか必死だった。 女友達ばっかりの俺、クラブ活動は手芸部、ままごと遊びが何よりも好き (しかも役柄はたいてい妹かママ)の俺に、相当やきもきしていたんだと 今ならはっきり解る。 セーラームーンのステッキが欲しいと言ったとき、父さんは、一拍おいて、 それから若干泣いた。 母さんや姉さんたちが必死になぐさめたけど、あんまり効果はなかったみたいで 父さんはむしろ逆上した。お前らが、ふざけてスカートなんか穿かせるから こうなったんだ、そもそも七五三の時振り袖着るっつって泣いたのも…とか、 過去のことまで蒸し返し始めた。 「お前、もしかして将来の夢、セーラ/ームーンだったりする?」 父さんが、涙を隠すみたいにぬぐいながら俺にきいたとき、いつもの俺なら 「なりたい」って即答してたんだけど、そのときは空気を読んで 「なりたくないこともない」って答えておいた。だけど父さんはまた泣いた。 中学の時、刺繍クラブに入部した俺に、父さんはもうなにも言わなかった。 中学の三年間、俺は刺繍クラブの黒一点でありつづけ、女の子たちと一緒に 刺繍に励んだ。最後の年、三年生のメンバー全員で刺繍した大きなクロスは 今でも母校に飾ってある。最後の一刺しは部長の僕に任せられ、震える手で 針を刺して、みんなで泣いた。青春の想い出だ。 高校に入って、バスケ部に入部したと言ったとき、お父さんは、また泣いた。 だけど、今までと違って、お父さんは泣きながら笑っていた。 スポーツなんて、お父さんからすればきっと男らしさの極みだったんだろう。 僕は刺繍をつづけたかったけど、無理矢理入れられた男子校に、そんな部活は もうさすがになかった。 個人的に刺繍の教室に通いたいと言ったけど、家族全員が、これ以上は 道を踏み外すからだめだと言って許してくれなかった。(よく考えたら道を 踏み外すってどういうことだろう。賭け事でも酒でもないのに、刺繍なのに。) しばらくぶらぶらしてたら、5月ごろものすごくかっこいい先輩に、 バスケ部に誘われたので、つられるみたいにして入部してしまったのだ。 ものすごくかっこいい先輩の名前は秋山さん。秋山先輩には先輩にそっくりの、 ものすごくかっこいい弟が3人もいるという噂なのだけど、それは定かじゃない。 部活中、練習の中休み、みんながこっちに駆け寄ってくるので、僕は一人ずつに おつかれっす!と言いながら、タオルとドリンクを手渡す。 最後にやってきた秋山先輩。汗ばんでる腕とかまで超かっこいいなぁと 思いつつ、ガン見しながらタオルを渡すと、「則定くんお疲れ」と 先輩が声をかけてくれた。 「則定くんが入ってくれて、ほんと助かった。ありがとう!」 洗濯上手だよね、則定君。マネになってくれて本っ当に嬉しい。 秋山先輩はキラキラした笑顔でそう言ってくれる。どきどきする。 「則定君くんが来てから、部室もきれいになったし、ユニフォームも タオルもふわふわだし、いいことばっかだよ。何よりなんか華やいだ! 則定くん、かわいいんだもん。男でこんなかわいいヤツ、見たことない。 だいたい男ってのは…」 最後の台詞だけ、なぜかものすごくよどんだ顔で発した先輩を、心配そうな 顔してみると、先輩はまたすぐに笑顔を作ってくれる。なんてかっこいいんだろう。 「何でもお礼するから、言ってね」 おお、思っても見なかったチャンス到来。 秋山先輩のこの一言に、思わず天にも昇るようなここちになってしまった。 心の中で父さんごめん、と呟いてから、俺は、じゃあ今度の日曜日、と 先輩に切り出した。 ----   [[男ばかり四兄弟の長兄×姉ばかり四姉弟の末弟>9-529-1]] ----

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