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ギターとドラム ---- スタジオの重いドアを開けると、ドラムセットの前に直人がいた。 真剣な表情で、神経質にシンバルの位置を調整している。 「お疲れ」と声をかけてから「ああ」と返事らしきものが返ってくるまで十秒。 「調子どうだ?」と問いかけてから「うん」と返事になってないものが返ってくるまで三十秒。 ここで構って欲しいからとちょっかいをかけても、冷たい視線が返ってくるだけなので 俺は大人しくケースからギターを取り出して、壁際に座り込む。 外の音が遮断されているから、スタジオの中はしんとしている。 もう少ししたら他のメンバーが来て騒がしくなるが、今はドラムの音が微かに響くだけだ。 そのまま約十分間、直人は黙々と叩いては再調整を繰り返していたが、 不意にこちらを見て「アンプ、繋げば」と言った。 「この間も言ったけど、神崎が俺に遠慮する必要はないよ」 愛想笑いとは無縁の表情で喋る直人に、俺は笑いかけてやる。 「別にしてねーよ。もう少ししたら俺も始める」 「だったらいいけど」 そう言う間もにこりともしない。が、俺は怯まない。 「あ、でも直人が俺の熱い熱い眼差しに気が散るって言うんなら」 「散らない」 そう言ってあっさり俺から視線を外して、ドラムセットに向き直る直人。 こういう冷たい反応にはいい加減慣れている。だから、俺はめげない。 「俺、お前がドラムと向き合ってるとこ見るのが好きなんだよな」 ノーリアクション。 「ここだけの話、実はさ」 反応なし。 「この十五分かそこらのために、俺いつも早めにスタジオ来てる」 がたん、とバスドラムのペダルが音をたてた。 ----   [[攻めが浮気>9-479]] ----

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